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森内俊雄の掌編小説集

 久しぶりに書誌をアップしたくなりました。
 誰にしようかと考えた結果……。

 森内俊雄の短い短編は、ショートショートとは少し違うと思いますが、幻想的な味わいのものも多く、けっこう好きです。
 ということで、森内俊雄の掌編小説集リストです。

『ノアの忘れもの』文藝春秋(73)
『夢のはじまり』福武文庫(87)
『風船ガムの少女』福武書店(88)
ノアの忘れもの.jpg 夢のはじまり.jpg 風船ガムの少女.jpg
『桜桃』新潮社(94)
『短篇歳時記』講談社(99)
『空にはメトロノーム』書肆山田(03)
桜桃.jpg 短篇歳時記.jpg 空にはメトロノーム.jpg
 私が把握しているのは以上の6冊ですが、ちゃんとリストアップできているか、あまり自信はありません。
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『ザ・クレーター』

 1月17日、映画『アメリカン・シビル・ウォー』を観たことを記事に書きました。アンブローズ・ビアスの短編「ある将校」「良心の問題」「アウル・クリーク橋の事件」を原作とするオムニバス映画です。
 記事にも書きましたが、とにかく「アウル・クリーク橋の事件」ですね。初めて小説を読んだときの衝撃は忘れられません。
 で、先日です。知人Mさんが「手塚治虫が似たようなマンガを描いていますよ」と教えてくれました。『ザ・クレーター』中のエピソード「生けにえ」とのこと。
『ザ・クレーター』は読んだことがあるはずですが、そんな話は覚えていません。確認しようにも本を持っていなくて、秋田文庫版(全2巻)を買いました。
ザ・クレーター1.jpg ザ・クレーター2.jpg
 まずは「生けにえ」です。――なるほど。確かに似ています。ただ、「生けにえ」は冒頭でネタバレ全開(笑)。似てはいますが、「アウル・クリーク橋の事件」とは物語の作り方が違いますし、作品のテーマもまるっきり別のところにありますね。
 続いて、ほかの作品も読みました。「三人の侵略者」「オクチンの大いなる怪盗」「大あたりの季節」といったあたり、記憶に鮮明に残っていました。初出誌リストには、「少年チャンピオン」1969年~1970年に掲載とあります。もしかすると、『ザ・クレーター』は雑誌掲載時に読んだだけで、単行本は読んでいないかもしれません。となれば、「生けにえ」は読んでいない可能性もあります。ま、いずれにしても40年くらい前の話でありまして……(笑)。
 新鮮だったり懐かしかったり、非常に楽しく読むことができました。
 Mさん、ありがとうございました。
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『壊れやすいもの』

 昨日からニール・ゲイマン『壊れやすいもの』角川書店(09)を読んでいます。詩を含む作品集で、全31編収録(+著者あとがき「本書について」のなかに1編)。ほとんどの短編は短いですし、「ストレンジ・リトル・ガールズ」は12編、「ヴァンパイア・タロットの十五枚の絵入りカード」は22編の小品から成るオムニバス・ストーリーです。ショートショート集と言ってもいいでしょう。
壊れやすいもの.jpg 献辞――
>短編小説の名手、
>レイ・ブラッドベリ、ハーラン・エリスン、
>いまは亡きロバート・シェクリイに捧ぐ
 くわー。泣かせますね。
 短いものを適当にピックアップして、つまみ読みをしている最中ですから、全体的な評価はできませんが、少なくとも今のところは非常に楽しんでいます。
 そんな段階なのに記事を書こうと思ったのは――
「ヴァンパイア・タロットの十五枚の絵入りカード」中の1編「魔術師」を読んだからです。
 あはっ。これは私のショートショート「不老不死を信じますか」(『夢中の人生』講談社(88)に収録)と同じオチではないですか。たった4行で書かれては、たまりませんねえ(笑)。
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『タイムマシンのつくり方』

鏡の国のアリス.jpg 毎度お馴染み、大熊宏俊さんのところで広瀬正『鏡の国のアリス』が話題になっています。
 実は私が最初に読んだ広瀬正作品は『鏡の国のアリス』なのでした。確か高校生のころ、いや、中学生だったでしょうか。冒頭の女湯シーンで、思春期だった少年は物語に引き込まれ……(笑)。いやあ、抜群に面白かったですね。当然のことながら、ほかの著作にも手を伸ばしました。『マイナス・ゼロ』『ツィス』『エロス もう一つの過去』……。そのいずれもが面白く、夢中になって読みました。
 しかし、私が『鏡の国のアリス』を読んだときには、すでに広瀬正はこの世の人ではありませんでした。すべての著作を読み尽くし、「もう広瀬正の小説は読めないのか」と茫然としたものです。享年47。若すぎます……。

 広瀬正が遺した著作は6冊だけですが、そのなかには、ショートショートと短編をまとめた1冊もあります。
『タイムマシンのつくり方』河出書房新社(73)/河出書房新社・広瀬正・小説全集6(77)/集英社文庫・広瀬正・小説全集6(82)/集英社文庫・広瀬正・小説全集6(08)*改訂新版
河出書房新社.jpg 広瀬正・小説全集.jpg 集英社文庫.jpg 集英社文庫(改訂新版).jpg
 これがまた傑作揃いでして……。
 この本を読まずして、タイムマシンものの小説を書いてはいけません。
 なお、初刊本の解説は星新一、以降は筒井康隆です。

 最後に、ちょっとマニアックな情報を。
 広瀬正の処女長編『マイナス・ゼロ』はSF同人誌「宇宙塵」1965年4月号~13月号(№90~№99)まで、10回にわたって連載されましたが、そのときのタイトルは『マイナス0』なんですね。「0」には「ゼロ」とルビがふられています。
 以下、連載第1回が掲載された「宇宙塵」1965年4月号(№90)、そのタイトルページ、最終回掲載の「宇宙塵」1965年13月号(№99)、そして「広瀬正追悼特集」の「宇宙塵」1972年4月号(№163)です。――それにしても「13月号」って、すごいですね(笑)。
宇宙塵90号.jpg マイナス0.jpg 宇宙塵99号.jpg 宇宙塵163号.jpg
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『男のポケット』特別編

 ラジオ『男のポケット』特別編の録音データを入手しました。(詳細はこの記事参照)
『男のポケット』が4日間だけの限定復活! なんて触れ込みでしたが、その内容は眉村卓が自作ショートショートを朗読するだけ。う~~~~ん、眉村卓の生トークが聞きたかったですねえ。残念。
 朗読されたのは、すべて『僕と妻の1778話』集英社文庫(10)に収録されている作品です。この放送のことをお知らせした記事(昨年12月7日)では――
> 今回の『男のポケット』復活放送には、1月15日公開の映画『僕と妻の1778の物語』の
>プロモーション的な意味合いもあるようです。
 と書きましたが、「プロモーション的な意味合い」ではなくて、100パーセント・プロモーションでした。(書影は「キネマ旬報」2011年1月下旬号。「巻頭特集 僕と妻の1778の物語」は読みごたえがあります)
キネマ旬報.jpg 番組で朗読されたのは以下の4編です。

 1月10日(月):第198話「偶然の顔」
 1月11日(火):第524話「心を明るく」
 1月12日(水):第699話「タイムマシンで着いたところ」
 1月13日(木):第868話「神様の素」

 最終日には別枠で眉村卓インタビューも放送されました。それによりますと、今回朗読された4編は、番組のパーソナリティ(KOJI)が『僕と妻の1778話』からセレクトしたものだそうです。
 放送をここにアップすることは簡単ですが、著作権に触れますので、それはできません。昨今のインターネット状況を見ていると、やっちゃっても構わないような気もするんですけどね(苦笑)。
 ともあれ――
 録音してくれたTさん、ありがとうございました。貴重な資料として、大切に保存させていただきます。
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オチのあるミステリー

 星新一ファンクラブ〈エヌ氏の会〉では〈星CON〉――星新一さんを囲むファンの集いを開催していました。
 その第1回〈星CON'78〉の公式記録(1978年12月1日発行)を読んでいましたら、会場で行なわれた星さんの講演記録も掲載されていました。ショートショートの定義に関して、非常に興味深いことを話されていますので、紹介いたします。

星CON'78公式記録.jpgショートショートはもともとオチのあるミステリーで、SFのショートショートというのは、ボクも一度アンソロジーを作ろうと思ってリストアップしたんですが、ほとんどなくて、例外というのはF・ブラウンでありまして、彼があまり日本のSFの初期に紹介されたので、ブラウン、イコール、ショートショートということになったので、どうもボクとブラウンにショートショートを誤まらせた責任があると思います。本当ならヘンリー・スレッサーみたいなのがショートショートの本来の有り方です。

 いかがですか。
「ショートショートはもともとオチのあるミステリー」で、「ヘンリー・スレッサーみたいなのがショートショートの本来の有り方」なんですよね。
 もうちょっと詳しいことを『ショートショートの世界』に書いています(24~28ページ)。ご参照いただければ幸いです。
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『復讐記』

 原作・梶原一騎/漫画・影丸穣也『復讐記 +影丸穣也短編集』マンガショップ(07)を読みました。
復讐記.jpg 表題作『復讐記』はデュマ『モンテ・クリスト伯』の漫画化――デュマの小説をもとに梶原一騎が原作を書き、それを影丸穣也が漫画化するという、回りくどい過程を経て誕生した作品です。2年くらい前に買ったまま放置しておいた本ですが、ここのところ『モンテ・クリスト伯』ノスタルジーに浸っていて、いい機会だから読もうかな、と。
 う~~~~~ん。あの長大な作品を200ページあまりの漫画にするのは、いかに天才・梶原一騎をもってしても、無理がありすぎますね。ただストーリーを追っているだけ(要するにダイジェスト)で、全然楽しくなかったです。
『漂流 本から本へで筒井康隆は――
> 以後、ぼくは今でも、この作品を子供向けの本でしか読んでいない若い作家志望者に、
>原典で読むことを奨めている。
 と書いています。つまりは、そういうことなのですね。納得であります。
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古~い『モンテ・クリスト伯』

 先日の記事にも書きましたように、とにかくデュマ『モンテ・クリスト伯』が好きです。
 若いころ、古本屋を回っていて『モンテ・クリスト伯』を見かけると、その本を読む気はなくても自然に手が伸びていました。先日の記事に書影をアップした新潮社・世界文學全集版(全2巻)も、そのころに買った本です。
 世界文學全集は昭和初期の本ですが、もっと古いものもあります。黒い本のコーナーを眺め、目についた2冊を取り出してきました。(もちろん、黒岩涙香『巌窟王』以外です)
 こんな記事を喜ぶ人がいるとは思えませんが、紹介しちゃいます。

◎笹川臨風編輯『通俗モントクリスト物語』通俗教育普及會・通俗叢書(大正6年1月15日発行)
 裸本です。扉の画像もアップしておきます。
◎アレキサンダア・ヂユウマ著/谷崎精二・三上於菟吉譯『モントクリスト伯爵―前編―』新潮社・泰西傳奇小説叢書(大正8年9月13日発行)
 所有しているのは前編のみですが、今さら揃える気はありません。函には「ヂユウマ」と書かれていますが、本文では「ヂユマ」だったり「ヂューマ」だったり(笑)。
通俗モントクリスト物語.jpg 通俗モントクリスト物語(扉).jpg モントクリスト伯爵―前編―.jpg
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映画『アメリカン・シビル・ウォー』

 映画『アメリカン・シビル・ウォー』を観ました。アンブローズ・ビアスの短編「ある将校」「良心の問題」「アウル・クリーク橋の事件」を原作とするオムニバス映画です。
アメリカン・シビル・ウォー.jpg 2006年のアメリカ映画なんですが、映像は古めかしく、それがプラスに作用しています。で、やはり何と言っても最後の「アウル・クリーク橋の事件」ですね。ショートショートの超傑作! 小説を初めて読んだときには、ラストで「ぎゃっ!」と声を上げそうになりました。原作を読んでいなければ、映画でも「ぎゃっ!」となったでしょう。ほんと、この結末には無条件降伏です。
 余談ながら、DVDのジャケットには「戦争アクション映画の新境地!!」なんて書かれています。――アクション映画!? 違うでしょう(笑)。
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TVドラマ『世にも不思議な物語』

 DVD『世にも不思議な物語 ①超常現象②降霊現象』を観ました。半世紀前のTVドラマ・シリーズの第1話と第2話です。
 1ヶ月半くらい前でしたか、井上雅彦さんの口から、ひょろんとこのTVドラマの名前が出たのですね。『ミステリーゾーン』や『ヒッチコック劇場』と同系統のドラマで、日本でも放送されたとのことですが、私は観た記憶がありません。
 調べてみると、2話ずつ収められたDVDが発売されていると判明。現在6枚(第12話まで)発売されていて、今月19日には新たに4枚(第20話まで)が発売されるようです。とりあえず最初の2枚(第1話~第4話)を買ってみました。
 第1話「超常現象」は「実際にあった不思議な話」をそのまんま放り出した感じで、私としては今ひとつ。第2話「降霊現象」も基本は「実際にあった不思議な話」なのですが、ストーリーがきっちりと組み立てられている分、面白かったです。
『世にも不思議な物語 ③呪われた手④幻視現象』も近いうちに観ようと思います。タイトルからして、こちらのほうが面白そうですが、さて?
 続きを買うかは、これを観てからですね。
世にも不思議な物語1.jpg 世にも不思議な物語2.jpg
 この手のTVドラマですと、『悪魔の手ざわり』も好きでした。DVD化されていないようで、残念。
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特集「八百字の宇宙」

「小説新潮」今月号(2011年1月号)の特集は「八百字の宇宙」です。
小説新潮800号.jpg おお、文芸誌で久しぶりのショートショート特集だあ~、と喜んで購入し、先ほどから読み始めたのですが……。
 ? ? ?
 ショートショートとして読めるものもないことはないのですが、多くは、「何これ?」なんですね。ショートショートではないという以前に、小説ですらないものも多くて……。
 改めて確認すると――
>八十八人の作家が挑む、「原稿用紙二枚で何ができるか?」
 んぎゃ。そうだったのですか。小説の特集ではなかったのですね。
 それなら納得。と同時に、まだ3分の1くらいしか読んでいないのですが、読み続ける気力が失せました。
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『花の掟』

 拙著『ショートショートの世界』には数多くの書影が掲載されています。ほとんどは私の蔵書ですが、1冊だけ借り物があります。――谷川俊太郎『花の掟』理論社(67)です(同書129ページに掲載)。
 ショートショートを書く詩人はたくさんいますが、そのなかで谷川俊太郎はピカイチの存在です。可能であれば、そのショートショート集の書影を掲載するのは当然のことです。幸い、友人の尾川健くん(このブログにも何度かコメントをいただいたことがあります)が所有しているということで、貸していただいたのでした。
 いや実は、『ショートショートの世界』発行時点で、『花の掟』は所有してはいたのですよ。ただ、カバーの付いていない、いわゆる裸本なのでした。借りた本のカバーをコピーし、それを付けていましたが、コピーはあくまでもコピーです。探求し続けていたところ――
 先日ようやく、ちゃんとカバーの付いた『花の掟』を入手しました。う~~~む、長かったですねえ。感無量であります。
 下の書影は、左が正規カバー、右がコピー・カバーです。明らかに色が違いますね。
花の掟.jpg 花の掟(裏).jpg
 なお、『花の掟』は『ぺ』と改題され、講談社文庫(82)、ランダムハウス講談社文庫(08)に収録されています。(文庫化にあたり、「ぺ」「長いメキシコ風の頸飾り」「テレビ台本 りんご」の3編を増補。タイトルが変更されているものもあります。「押入の中」→「押入れの中」、「或る神学」→「ある神学」)
ぺ(講談社文庫).jpg ぺ(ランダムハウス講談社文庫).jpg

 あ、そうそう。
『ショートショートの世界』といえば、版元在庫が品切れになったようです。残念ながら、重刷という話はありません……。
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『漂流』

 筒井康隆『漂流 本から本へ』朝日新聞出版(11)を読みました。読書歴を軸に据えた、筒井康隆の自叙伝です。
漂流.jpg これはすごいですね。帯に「筒井康隆のつくり方」とありますが、まさにその通りと思います。さまざまな示唆に富みまくり。
 私がブログで書いたこともある作家や作品についても数多く言及されていて、筒井康隆と同じ作品に感銘を受けたかと思うと、何だか嬉しくなってしまいます。
 私が古今東西を通じて最高の小説と思っているデュマ『モンテ・クリスト伯』には――
>とにかく面白くて面白くて、明け方になるまで夢中になって読んだ。
 うはあ。私と全く同じです。
 筒井康隆が読んだのは新潮社・世界文學全集版(全2巻)とのこと。
>この本の上巻のカバーはシャトー・ディフの断崖から布袋に入れられたダンテスが
>海に投げ込まれようとしている場面、下巻のカバーはメルセデスがモンテ・クリスト
>に我が子の助命を嘆願している場面である。
 幸いなことに、私はこの本を所有しています。書棚から取り出してきました。(第1巻は昭和2年10月25日、第2巻は昭和3年8月15日発行)
モンテ・クリスト伯.jpg モンテ・クリスト伯(カバー).jpg
 幼き日の筒井康隆はこの絵を見て、胸を躍らせたのですねえ。
『モンテ・クリスト伯』となれば、私は必然的に黒岩涙香『巌窟王』を連想します。涙香関連では、ボアゴベ『鐡假面』も採り上げられていました。涙香翻案の『鐡假面』を江戸川乱歩がリライトしたものです。
鉄仮面.jpg これまた所有しているので……と書棚から取り出してきましたが、あらら、これは筒井康隆の読んだ本とは違いますね。筒井康隆が読んだのは1950年発行のハードカバーだそうですが、うちにあるのは1948年発行のソフトカバーでした。タイトルも『鉄仮面』となっています。
> そしてこの本も怖かった。鉄仮面を取り、なかば髑髏のような
>顔になった男を、森の中でヒロインが目撃する衝撃のシーンは、
>これまた梁川剛一の怖い見開きの挿絵であり、この挿絵と、
>この男の正体の意外性こそがこの本をいつまでも記憶していた
>理由だ。
挿絵.jpg どんな挿絵なのか、見たいですねえ。しかし残念ながら、所有している『鉄仮面』の挿絵は梁川剛一ではなく三芳悌吉でして、同じシーンを描いたと思われる挿絵(→右の画像)はあるものの、そんなに怖くはないのでした。見開きではないし、「なかば髑髏のような」という顔も判別不能です。

 とまあ、こんな具合で、『漂流 本から本へ』について書き出すと、止まりません。ほかにも書きたいことは山ほどありますが、これくらいにしておきます。
 この本の読み方は、人によって全く違うでしょうね。それぞれの読書体験と合わせ、それぞれの読み方ができるのです。
 筒井康隆ファンのみならず、本が好きな方すべてにお勧めします。

 ふと思えば、このブログは「高井信のつくり方」的な側面もありますね(笑)。

【追記】2013年7月9日
 江戸川乱歩『鐵假面』大日本雄辯會講談社(46)を買いました。残念ながら1950年刊のハードカバーではありませんが、挿絵は1950年版と同じ梁川剛一です。
 くだんのシーンを探しますと――
挿絵.jpg
鉄仮面.jpg う~~~ん。仮面をかぶったままですねえ。
 本文には――
> あゝ、その顔は人間か髑髏か。
> いや、髑髏よりなほ恐しい生きてゐる骸骨だ。
 とあります。筒井さんが書かれているのは、もしかしたら本文のことなのかも。
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ノベライズ『僕と妻の1778の物語』

 脚本:半澤律子/ノベライズ:百瀬しのぶ『僕と妻の1778の物語』角川文庫(10)を読みました。同題映画のノベライズです。
 やはり、第1778話「最終回」ですね。
 ノベライズでは、最初の3行のあと――

 朔太郎は万年筆を原稿用紙から離した。ペン先を浮かせたまま、万年筆は原稿用紙の上にゆっくりと丁寧に文字を綴っていく。

 と続き、ほぼ1ページの空白。そして、最後の3行……。
 真っ白に過ぎないページに、何か文字が浮かんでくるような気がしました。1777話の上に存在する第1778話には、そのすべてが凝縮されています。
 眉村さんが奥様のためにショートショートを書かれているころ、ちょくちょくお会いする機会がありました。そのたびに、「××話になった」と……。
 あのころのことを思い出します。「最終回」に接するのは、これで何度目でしょうか。今回も胸に迫るものを感じました。文字数にすれば100字にも満たないのですが、原稿用紙5万枚余の総決算なんですよね。
僕と妻の1778の物語.jpg で、肝心の物語は――
 よくできているとは思います。思いますが……。
 この主人公は眉村卓ではないですね。わかっていたことではありますが、眉村さんはあくまでもモデルであり、映画の牧村朔太郎は別人であるとの思いを強くしました。
 ちなみに――
 私が眉村さんと初めてお目にかかったのは1978年11月20日です。眉村さんが44歳、私が21歳のときでした。

 映画『僕と妻の1778の物語』は明日公開です。

【追記】1月15日
 オリジナル・サウンド・トラック(CD)も発売されているのですね。思いっきり試聴してしまいました(笑)。→ここ
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『手塚治虫=ストーリーマンガの起源』

 手塚治虫記念館「星新一展~2人のパイオニア~」では、ショートショートのパイオニアである星新一、ストーリーマンガのパイオニアである手塚治虫にスポットが当てられています。
 ショートショートのパイオニア・星新一については、おおむね理解できていると思いますが、ストーリーマンガのパイオニア・手塚治虫に関しては……。直感的に「そうだよなあ」とは思いますけれど、その背景や実態については「よくわからないなあ」というのが正直なところです。
 手塚治虫記念館での展示を見て以来、そのことが気になっていまして、竹内一郎『手塚治虫=ストーリーマンガの起源』講談社選書メチエ(06)を読んでみることにしました。
 面白くて面白くて、あっという間に読了。
 まずは「第一章 手塚以前の漫画と戦後の漫画状況」に引き込まれました。マンガの歴史というと、米沢嘉博『戦後SFマンガ史』新評社(80)を読んだことがありますが、ずいぶん前のことで、おおかた忘れてしまっています。新鮮な気持ちで読み、とっても勉強になりました。
 第二章以降、本格的な手塚治虫論が展開されます。
 手塚治虫はデビュー作『新宝島』(昭和22年)以後、矢継ぎ早にSFマンガを発表していますが、
> ところが、本人には当時「SF作家」の自覚はなかったようである。まず、手塚自身が
>戦前のSF小説を読んでいない。(133ページ)
 びっくりしましたねえ。
 ほかにも、
> 手塚は「どうやったら人を惹きつけられるか」「どうすれば人をあっと言わせられるか」を
>考える天才であったのだ。おそらく、まず「どうやったら人を惹きつけられるか」「どうすれ
>ば人をあっと言わせられるか」という命題が手塚にあり、結果的に、映画的技法やSF的
>斬新さを作品に取り入れることになったのではなかろうか。
> 手塚という作家を、こう定義することもできる。「どうやったら人を惹きつけられるか」「ど
>うすれば人をあっと言わせられるか」を生涯考え続け、そのためには剽窃も含め、手段を
>選ばなかった作家である、と。(165ページ)
 とか、
> 私が実作者の立場で手塚に驚異を感じるのは、「大御所でありながら、若い作家の技
>法を真似ることができる」ことである。これは創作者の世界ではまれなことだろう。プライ
>ドが許さない。それを手塚は、やってのけるのである。(198ページ)
 とか、いろいろと考えさせられ、実に興味深かったです。
 読み終わり、書庫から短編集『空気の底』大都社(75)を取り出してきました。手塚治虫が「この短編のどれもが大好きです」と語っていると書かれていて(213ページ)、はて、どんな作品が収録されているんだっけ? と思ったからです。
 この本、大昔に読んだきりなんですが、目次を眺めると、「あ、これも覚えてる。これも覚えてる」状態でした。全15編収録。ほとんどが短い作品でして、マンガのショートショート集と言ってもいい本ですね。
 これから再読しようと思います。
手塚治虫=ストーリーマンガの起源.jpg 戦後SFマンガ史.jpg 空気の底.jpg
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ホシヅルの羽(続)

 昨年5月1日の記事「ホシヅルの羽」の続きです。
 ちょっとした事情がありまして、〈星CON〉のことを調べていたところ、『星CONⅢ非公式記録』エヌ氏の会(1980・12・1発行)に、「星ヅルのハネ(真弓裕美子)」というレポートが掲載されていることに気がつきました。
星CONⅢ非公式記録.jpg 以下、抜粋します。

星ヅルは、一般的に白なのでありますが、地域によって色が違ってくることが判明したのであります。アメリカ産のブルーとソビエト産の赤が、現在当局の手に入ったものでこれは星CONでお分けしたものであります。今回新しくピンク色のハネが発見されました。これは世にもめずらしい「メスの星ヅルのハネ」ではないかと当初いわれておりました。しかし、このピンクのハネは、星ヅルの中でも最も強いプロレスラーアトミック星ヅルのハネという説が有力になりました。

 なるほど~。私所有の「白」は一般的で、山本孝一さん所有の「ピンク」はレアなんですか。
 私、〈星CONⅢ〉に参加しましたし、『星CONⅢ非公式記録』も読んでいるはずなんですが、すっかり忘れていました。
 あ。〈星CON〉というのは、星新一さんを囲むファンの集いの名称です。その3回目となる〈星CONⅢ〉は1980年5月24~25日、浜名湖畔の旅館で開催されました。
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『日本ミステリー進化論』

 長谷部史親『日本ミステリー進化論 【この傑作を見逃すな】』日本経済新聞社(93)を読んでいます。
【第Ⅰ章】日本ミステリーの現在
【第Ⅱ章】日本ミステリーの歴史
【第Ⅲ章】日本の代表的作家たち
 という3部構成になっていて、【第Ⅲ章】が3分の2近くを占めます。
 当然と言いましょうか、私は【第Ⅱ章】から読み始めました。明治時代から昭和40年代までの日本ミステリーの歴史が簡潔かつ詳細に(矛盾した表現ですが、実感です)まとめられています。いやあ、面白いですね。日本ショートショートの歴史と重なる部分もあり、その点でも興味深く読みました。
 続いて【第Ⅰ章】を読み、現在は【第Ⅲ章】をつまみ読み(苦笑)している最中です。
 この著者の本を読むのは、『探偵小説談林』六興出版(88)、『欧米推理小説翻訳史』本の雑誌社・活字倶楽部(92)に続いて、本書が3冊目です。いずれの本にも数多くの書影(稀覯本多数)が掲載されていて、それが大きな魅力ですね。今回も書影を大いに楽しませていただいています。
 ほんと、書影フェチであります。
日本ミステリー進化論.jpg 探偵小説談林.jpg 欧米推理小説翻訳史.jpg 
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『妖奇怪談全集』

妖奇怪談全集.jpg 山田誠二『妖奇怪談全集 ひとりで夜、読むな!』ビジネス社(09)を読みました。『幻の怪談映画を追って』の著者による怪異談集です。
 読み始める前に本をぱらぱらと眺めていて、「おっ」と私は思わず声を上げました。「猟奇怨念因果物語 猫の怪」という作品の末尾に――
>(入江将介/作 梅田佳声/演による紙芝居『猫三味線』に
>インスパイアされた作品です)。
 と書かれていたからです。
 おおっ、『猫三味線』!
猫三味線.jpg この紙芝居はDVDになっています。5年くらい前でしたか、友人の山本孝一さん(コメント欄でお馴染み)に、「面白いよ」とDVDを貸していただきました。
 聞いたことのない作品でして、紙芝居をDVDで観て面白いんだろうか? とは思ったものの、とりあえず鑑賞。
 あまり期待していなかったわけですが、これが想像とは大違いで、抜群に面白かったんですね。紙芝居師・梅田佳声の語りがまさに絶妙。3時間近い長尺ものですが、全然気になりませんでした。(のちに中古DVDを見かけ、購入しました)
 ということで、「猟奇怨念因果物語 猫の怪」です。
『猫三味線』にインスパイアされた小説となれば、期待しちゃいますねえ。しかし……。
 読み終わって、これがインスパイア作品? と首を傾げました。登場人物もストーリーも紙芝居とほとんど同じではないですか。もちろん面白かったんですけれど、これをインスパイアと言ってはいけないですね。まあ、翻案というのが妥当でしょう。
 久しぶりに『猫三味線』を鑑賞したくなりましたが、う~~~~ん、166分。

 本書には怪談映画6編を収録したDVDが付いていますが、まだ観ていません。ほかに観たいDVDがたくさんあるんですよね。
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〈世界ユーモア文学全集〉と新装版

 前回の記事の続きです。
〈世界ユーモア文学全集〉収録作品のうち、新装版である〈世界ユーモア文学選〉や〈世界ユーモア文庫〉に収録されていない作品を調査しました。※印が新装版発行の際にオミットされた作品です。

 第1巻 山賊株式会社社長(エドモン・アブー)
      ジョージア・ボーイ(アースキン・コールドウェル)
 第2巻 おやじ天下(クラレンス・デイ)
      二ペンスの切手(トリスタン・ベルナール)
      ※がめつい野郎(G・A・ウィサン)
      ※条件つき貸間(ベルナール・ジェルヴェーズ)
 第3巻 雪の中の三人男(エーリッヒ・ケストナー)
      ※陽気な騎兵隊(ジョルジュ・クールトリーヌ)
 第4巻 マリナー氏ご紹介(P・G・ウッドハウス)
      マルタン君物語(マルセル・エイメ)
 第5巻 当世人気男(アーノルド・ベネット)
      ※わが夢の女(マッシモ・ボンテムペッリ)
 第6巻 十二の椅子(イリヤ・イリフ&エウゲニー・ペトロフ)
 第7巻 ※わたしの妹アイリーン(ルース・マッキニー)
      ※ドン・カミロの小さな世界(ジョヴァンニ・グァレスキ)
 第8巻 おれは駆けだし投手(リング・ラードナー)
      泣き笑い人生(ショーロム・アレイヒェム)
 第9巻 西部旅行綺談(マーク・トウェーン)
      ガス屋クニッテル(ハインリヒ・シュペール)
 第10巻 エッフェル塔の潜水夫(カミ)
 第11巻 ボートの三人男(ジェローム・K・ジェローム)
      ※盗まれた機密文書(カレル・チャペック)
      ※うわさ(モルナール・フェレンツ)
      ※運命(ヘルタイ・イェネー)
 第12巻 ※パパにはかなわない(ハンス・ニクリッシュ)
      ※現代ロシア短編集(アントン・チェホフほか)
 第13巻 トッパー氏の冒険(ソーン・スミス)
      ※ムルケ博士の沈黙集(ハインリヒ・ベル)
 第14巻 兵士シュベイクの冒険(上)(ヤロスラフ・ハシェク)
 第15巻 兵士シュベイクの冒険(下)(ヤロスラフ・ハシェク)
 別巻  ふらんす小咄大全(河盛好蔵訳編)
 別巻  アメリカほら話(井上一夫訳編)
 別巻  にっぽん小咄大全(浜田義一郎訳編)

 新装版は長編偏重になっていることが、よくわかります。
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〈世界ユーモア文学選〉の謎

 筑摩書房〈世界ユーモア文学選〉の2冊――マーク・トウェーン/E・コールドウェル『西部旅行綺談/ジョージア・ボーイ』、アーノルド・ベネット『当世人気男』を入手しました(ともに1969年刊)。
西部旅行綺談/ジョージア・ボーイ.jpg 当世人気男.jpg
 謎に包まれた――というほど大袈裟なものではありませんが、この〈世界ユーモア文学選〉には悩まされます。
 2009年3月6日の記事には、以下のように書きました。
>〈世界ユーモア文学全集〉は1969年には〈世界ユーモア文学選〉として、さらに1977年から78年にかけては〈世界ユーモア文庫〉として、全10巻の再編集新装版が刊行された(両者は同一ラインナップ。いずれもソフトカバー)。
 しかし、2009年8月10日の記事で――
> 先日、〈世界ユーモア文学選〉版の『エッフェル塔の潜水夫』を入手しました。巻末に既刊目録があって、それを見ると、『ふらんす小咄大全』『にっぽん小咄大全』『アメリカほら話』の3冊も〈世界ユーモア文学選〉に含まれています。――つまり、〈世界ユーモア文学選〉は全10巻ではなくて、全13巻(あるいは、全10巻+別巻3冊)だったんですね。
 と訂正しています。
 それに加え、今回、『当世人気男』の巻末目録に、『兵士シュベイクの冒険(全2巻)』も〈世界ユーモア文学選〉として掲載されていることに気がつきました。(『エッフェル塔の潜水夫』の巻末にも掲載されているのですが、見過ごしていました)
 まとめますと――

『ふらんす小咄大全』
『にっぽん小咄大全』
『アメリカほら話』
『兵士シュベイクの冒険(全2巻)』
 以上5冊は1968年刊。すべて〈世界ユーモア文学全集〉の新装版です。この時点では〈世界ユーモア文学選〉という叢書はなく、のちに〈世界ユーモア文学選〉に組み込まれます。ただし、私の所有している『ふらんす小咄大全』『にっぽん小咄大全』『アメリカほら話』、いずれにも〈世界ユーモア文学選〉とは記されていません。
 以下は1969年刊。〈世界ユーモア文学全集〉の新装版、あるいは再編集版です。帯に〈世界ユーモア文学選〉と記されています。
『山賊株式会社社長/二ペンスの切手』
『西部旅行綺談/ジョージア・ボーイ』
『おれは駆けだし投手/おやじ天下』
『エッフェル塔の潜水夫』
『雪の中の三人男/ガス屋クニッテル』
『ボートの三人男』
『当世人気男』
『マリナー氏ご紹介/トッパー氏の冒険』
『十二の椅子』
『マルタン君物語/泣き笑い人生』

 う~~~~ん。
 以上の15冊のうち、私が所有しているのは8冊だけです。すべての現物確認ができていない現在、確かなことは言えないのですが、正式な〈世界ユーモア文学選〉は全10冊(のちの〈世界ユーモア文庫〉と同一ラインナップ)と見るのが正しいのでしょうね。ただし、〈世界ユーモア文学選〉発刊以前に出た5冊も含め、全15冊という見方もできる、と。
 これでもう間違いないと思うんですが……。
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『幻の怪談映画を追って』

 和洋問わず、古い特撮映画が好きです。邦画では、この記事にも書きましたように昭和30年代の東宝映画ですね。
 同じころ、新東宝でも盛んに特撮映画――おもに怪談映画を作っていたのですが、これまであまり観る機会がありませんでした。記憶にあるのは『東海道四谷怪談』『怪談累が渕』『亡霊怪猫屋敷』『怪猫お玉が池』くらいでしょうか。
 正月、新東宝の映画『女吸血鬼』と『花嫁吸血魔』を観ました。
 2作とも面白かったですねえ。独特の味わいというか癖というか、東宝の特撮映画とは明らかに違っています。
『女吸血鬼』は、そのタイトルに反して女吸血鬼は出てきません。出てくるのは、月の光を浴びると変身する、まるで狼男みたいな男吸血鬼(笑)。現代を舞台にしているのですが、現代といっても半世紀前の現代でして……。「カックンよ」なんて、子どものころに聞いたことがあるような、ないようなセリフもあり、笑みを浮かべてしまいました。
『花嫁吸血魔』は明らかにデュマ『モンテ・クリスト伯(巌窟王)』を下敷きにしていて、その点でも楽しめました。怪談映画ではありませんが、やはり新東宝の『女巌窟王』は観たことがあります。『女巌窟王』よりも『花嫁吸血魔』のほうがずっと『巌窟王』(笑)。
幻の怪談映画を追って.jpg いやはや、恐るべし、新東宝の怪談映画。

 ということで、山田誠二『幻の怪談映画を追って』洋泉社(97)を手に取りました。だいぶ前に読み、面白そうな映画が多いなあと思いつつ、実際に観る機会がないまま過ごしていました。
 改めて、巻末の「大藏貢の製作した怪談映画全部解説」を眺めると、観たい映画が目白押しです。
 お楽しみはこれからだ~(嬉)。
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『クローン誕生』

 昨年末、映画『ブラジルから来た少年』を観ました。ヒトラーのクローンを作る話です。
 今日、書棚を眺めていましたら、岩崎説雄『クローンの誕生 “もうひとつの生命”の不思議』KKベストセラーズ・ワニの本BESTSELLERS(97)というタイトルが目に飛び込んできました。
 手に取ってみると、カバー袖に「◎暴君ヒトラーの再来は本当に可能なのか!?」と書かれています。
クローン誕生.jpg おお、グッドタイミング!
 この本は買っただけで、読んでいないと思います。いい機会なので読むことにし、先ほど読了。
 ええ、面白かったですよ。知らないことがたくさんあり、勉強にもなりました。しかし……。
 袖に「◎暴君ヒトラーの再来は本当に可能なのか!?」とあり、目次にも「「ヒトラー再来」の危惧における矛盾」なんて書かれていたら、当然『ブラジルから来た少年』についても触れられていると思っちゃいます。それを期待して読むことにしたのに、あらら何と、全く無視だったのでした。
 映画などのフィクションに言及しないというポリシーで書かれた本であれば、それもわかりますけれど、そうではありません。『ジュラシックパーク』にはかなりのページが割かれていますし、『フランケンシュタイン』『ドクター・モローの島』『フライ』といった映画も、タイトルだけですが出てきます。(【註】『フライ』は『ザ・フライ』のことと思います)
 にもかかわらず、なぜ『ブラジルから来た少年』に触れないのでしょう。いやもちろん、知らなかったからなのでしょう(知っていて、あえて触れなかったのだとしたら、著者の見識を疑います)けれど、釈然としないですね。ヒトラーのクローンについて考察する以上、知らなかったでは済まないと思います。
 科学者は『ブラジルから来た少年』をどう見るのか、知りたかったですねえ。
 誰かサジェストする人はいなかったのでしょうか。残念です。
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『おとぎ話を科学する』

 昨年4月21日の記事で――
> TOKON10実行委員会公式ブログに、宮野由梨香「東京SF大全23『ボッコちゃん』」
>なる論考がアップされています。へえ、こういう読み方もあるのか、と興味深いです。
 と書きました。
 その宮野由梨香、今度は第50回日本SF大会公式ブログ「ドンブラコン日記L」において、同じく星新一のショートショート「羽衣」を考察しています。(→ここ
 ほんと、評論家という人種は面白い読み方をしますねえ。感心します。
おとぎ話を科学する.jpg ふと、ちょっと前に読んだ本を思い出しました。――大槻義彦『おとぎ話を科学する』PHPビジネスライブラリー(98)です。
 カバー袖の紹介を引用しますと――

*“浦島太郎が乗った亀”は超高速で飛行する「UFO」だった!?
*“かぐや姫降臨”は「地球外生命体」の生体実験だった!?
*“花咲か爺さんの犬”は「超音波」で大判小判を掘り当てた!?
*“一寸法師誕生”の遠因は「環境ホルモン」だった!?
*人を凍らせる“雪女の息”は「液体窒素温度」だった!?
*“こぶとり爺さんのこぶ”は「暗示効果」で消失した!?

 大槻教授が日本古来のおとぎ話を科学的・合理的に解釈し、それに即した物語を作り上げた――言ってしまえば、ハードSFおとぎ話集です。←ほんとか?(笑)
 この本のなかで大槻教授は「天女の羽衣」も採り上げています。物語の要所には「大槻教授の科学教室」なるコラムが挿入され、この「天女の羽衣」には「プラズマ推進ロケット」「宇宙人と地球人の間に子どもはできるか?」「軽く温かい織り物」。
 科学者という人種も面白い読み方をしますねえ。もっとも、こちらは私の読み方に近いかもしれません。

【追記】
 私はショートショート作家で、ショートショート研究家&収集家ではありますが、ショートショート評論家ではないと思っています。もちろん、依頼があれば評論めいたものも書きますけれど。
 ふと思いついて、“ショートショート評論家”をキーワードにgoogle検索してみました。ヒットしたのは「星敬」と「工藤伸一」の2人。
 自分でも認識している通り、私の名前はヒットしませんでした。
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『大江戸神仙伝』シリーズ

 昨年末、TVドラマ『大江戸神仙伝』を久しぶりに観て、このシリーズ(小説)が無性に懐かしくなりました。大好きなのに、いつしか読まなくなってしまったんですよね。
 ネットで調べてみましたら――

『大江戸神仙伝』講談社(79)/講談社文庫(83)/評論社(92)
『大江戸仙境録』講談社(86)/講談社文庫(92)
『大江戸遊仙記』講談社(90)/講談社文庫(93)
『大江戸仙界紀』講談社(93)/講談社文庫(96)
大江戸神仙伝 いな吉江戸暦』講談社(96)/『大江戸仙女暦』講談社文庫(99)
『大江戸仙花暦』講談社(99)/講談社文庫(02)
『大江戸妖美伝』講談社(06)/講談社文庫(09)

 おお、7冊も出ていましたか。
 ちなみに、うちにあるのは以下の5冊だけでした。4冊目の『大江戸仙界紀』まで読んだような気がしますが……。
大江戸神仙伝.jpg 大江戸仙境録.jpg 大江戸遊仙記.jpg
大江戸仙界紀.jpg いな吉江戸暦.jpg サイン.jpg
 サインは『大江戸神仙伝』にいただいたものです。大好きな本にいただいたサインは、また格別ですね。
 石川さん、ありがとうございます。

【追記】1月7日
 未所有の2冊をネットで買いました。便利な世のなかになったものです。
大江戸仙花暦.jpg 大江戸妖美伝.jpg
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黒い本

 お正月になると必ず頭に「和尚がTwo」という言葉が浮かんでしまいます。強烈にインプットされちゃっているんですね(苦笑)。
 あ、そうだ。ついでに書いておきましょう。元日=元旦と思っている人が多いようですが、違います。元旦というのは元日の朝のことなんですね。「元旦の夜」とか、よく耳にしますが、そんなのは有り得ません。――以上、豆知識でした(笑)。

 さて。
 元日に緑川聖司『ついてくる怪談 黒い本』ポプラポケット文庫(10)を買いました。この本でも飯野文彦『「超」怖い物語 黒い本』竹書房文庫(07)でも、「黒い本」=「呪われた本」です。
 しかし、「黒い本」と聞いて私が即座に連想するのは「古書」――古本(セコハン本)ではなくて、発行年代の古い本なんですね。明確な決まりがあるわけではありませんが、おおむね昭和20年代半ば以前に発行された本ということになるでしょうか。
 実際には黒いわけではないのですが、古い本には黒っぽいイメージが横溢しています。
“論より証拠”ではなくて、“百聞は一見に如かず”。――ということで、ちょっと恥ずかしいですが、うちの「黒い本」コーナーをご覧に入れることにしました。ショートショート関連の本(要するに短編集)を集めてあるあたりです。
黒い本棚.JPG
 汚いですねえ(笑)。興味のない方にはゴミにしか見えないでしょうけれど、私にとっては貴重な資料です。
 必要な本はまだまだたくさんあります。今年は何をゲットできるでしょうか。

フューチャーメン出動せよ!.jpg と、記事をアップする準備をしていたら、郵便受けに何かが投函される音が聞こえました。
 届いたのは、野田昌宏『フューチャーメン出動せよ!』宇宙軍参謀本部(10)でした(この記事参照)。
 ハヤカワ文庫そのまんまの装丁ですね(嬉)。さっそくパラパラと目を通し――
 う~~ん、素晴らしい! ありがたくて、涙が出そうになる本です。

 通販が開始されています。興味のある方は、こちらをご覧ください。
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野放図な日本語

 いやはや、驚きました。
 今日、買い物に行ったら、レジで――
「お釣りのほう、200円のほうになります」
 一瞬、耳を疑いましたよ。
「~になります」には慣れました(嫌ですけれど)。「~のほう」もそんなには気にならなくなりました(嫌ですけれど)。
 しかし、「200円のほう」には驚きましたねえ。話していて、違和感ないのでしょうか。聞いているほうは超巨大な違和感に襲われたんですが……。
 ちなみに、商品代金は360円で、私は500円玉1個、50円玉1個、10円玉1個を出したのですが、そのときは――
「500円のほうから預からさしていただきます」
 と言っておりました。「のほう」以外にも、ツッコミどころ満載(笑)。

【註】記事のタイトルは、何となくです。
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あけましておめでとうございます。

 いきなりですが、右下の画像は朝刊のチラシです。
 そんなわけで、新年早々、私はブックオフで古本と戯れておりました(笑)。
 で、こんな本を購入。
チラシ.jpg◎緑川聖司『ついてくる怪談 黒い本』ポプラポケット文庫(10)
◎緑川聖司『終わらない怪談 赤い本』ポプラポケット文庫(10)
黒い本.jpg 赤い本.jpg
 飯野文彦『黒い本』と何か関係があるのかしらん。

 ともあれ――
 本年もどうぞよろしくお願いいたします。
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