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『手塚治虫=ストーリーマンガの起源』

 手塚治虫記念館「星新一展~2人のパイオニア~」では、ショートショートのパイオニアである星新一、ストーリーマンガのパイオニアである手塚治虫にスポットが当てられています。
 ショートショートのパイオニア・星新一については、おおむね理解できていると思いますが、ストーリーマンガのパイオニア・手塚治虫に関しては……。直感的に「そうだよなあ」とは思いますけれど、その背景や実態については「よくわからないなあ」というのが正直なところです。
 手塚治虫記念館での展示を見て以来、そのことが気になっていまして、竹内一郎『手塚治虫=ストーリーマンガの起源』講談社選書メチエ(06)を読んでみることにしました。
 面白くて面白くて、あっという間に読了。
 まずは「第一章 手塚以前の漫画と戦後の漫画状況」に引き込まれました。マンガの歴史というと、米沢嘉博『戦後SFマンガ史』新評社(80)を読んだことがありますが、ずいぶん前のことで、おおかた忘れてしまっています。新鮮な気持ちで読み、とっても勉強になりました。
 第二章以降、本格的な手塚治虫論が展開されます。
 手塚治虫はデビュー作『新宝島』(昭和22年)以後、矢継ぎ早にSFマンガを発表していますが、
> ところが、本人には当時「SF作家」の自覚はなかったようである。まず、手塚自身が
>戦前のSF小説を読んでいない。(133ページ)
 びっくりしましたねえ。
 ほかにも、
> 手塚は「どうやったら人を惹きつけられるか」「どうすれば人をあっと言わせられるか」を
>考える天才であったのだ。おそらく、まず「どうやったら人を惹きつけられるか」「どうすれ
>ば人をあっと言わせられるか」という命題が手塚にあり、結果的に、映画的技法やSF的
>斬新さを作品に取り入れることになったのではなかろうか。
> 手塚という作家を、こう定義することもできる。「どうやったら人を惹きつけられるか」「ど
>うすれば人をあっと言わせられるか」を生涯考え続け、そのためには剽窃も含め、手段を
>選ばなかった作家である、と。(165ページ)
 とか、
> 私が実作者の立場で手塚に驚異を感じるのは、「大御所でありながら、若い作家の技
>法を真似ることができる」ことである。これは創作者の世界ではまれなことだろう。プライ
>ドが許さない。それを手塚は、やってのけるのである。(198ページ)
 とか、いろいろと考えさせられ、実に興味深かったです。
 読み終わり、書庫から短編集『空気の底』大都社(75)を取り出してきました。手塚治虫が「この短編のどれもが大好きです」と語っていると書かれていて(213ページ)、はて、どんな作品が収録されているんだっけ? と思ったからです。
 この本、大昔に読んだきりなんですが、目次を眺めると、「あ、これも覚えてる。これも覚えてる」状態でした。全15編収録。ほとんどが短い作品でして、マンガのショートショート集と言ってもいい本ですね。
 これから再読しようと思います。
手塚治虫=ストーリーマンガの起源.jpg 戦後SFマンガ史.jpg 空気の底.jpg
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