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『言えないコトバ』

言えないコトバ.jpg 益田ミリ『言えないコトバ』集英社(09)を読みました。
 他人が口にするのを聞くのはいいけど、いざ自分が使おうとすると躊躇してしまう。――そんな言葉について、あれこれを綴ったエッセイ集です。面白い着眼点ですね。
 最初に採り上げられているのが「おひや」です。
>家で水と呼んでいるものを、外では「おひや」などと、お出かけ用の
>名前に変換しようとする自分が照れくさいのだった。
 この気持ち、わかりますねえ。私は「おひや」と言えます(笑)が、そのたびに落ち着かない気持ちに襲われているのでした。
 私にも「言えないコトバ」はあって、たとえば「おやじ・おふくろ」です。幼いころのことは覚えていませんけれど、たぶん「パパ・ママ」だったのではないかと思います。それから「お父さん・お母さん」になり、高校生くらいになると周囲の友人は皆「おやじ・おふくろ」。私も頑張って、一時期は「おやじ・おふくろ」と言ってみたこともあるんですが、やはり何か違和感があって、その後はずっと「父・母」です。

 この著者(本業はイラストレーターだそうです)の日本語に対する意識の高さは相当なものですね。読んでいて、共感を覚えました。
 ほとんどの日本人は何も考えずに日本語を話していて――まあ、当たり前と言えば当たり前なんですが、それが誤用の氾濫や奇妙な言葉の誕生につながっていると私は思っています。
 とはいえ、実を申せば、私も以前はさほど意識してはいませんでした。“日本語の乱れ”を強く意識するようになったのは12~13年前でしょうか。これは小説のネタになると思い、誤用をテーマに初めて書いたのが短編「ニホン語」です(「小説CLUB」1999年1月号に掲載)。以後、誤用ショートショートを数多く書いています。
 いやしかし、これは諸刃の剣でもありました。自分が書いてきた文章が誤用のオンパレードだったことに気づかされ……。恥ずかしいなんてものではありません。
 赤面、赤面、また赤面! なのであります。
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