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「廃墟にて」

 新刊書店に行ってきました。何冊か目的の本がありまして――
◎ブッツァーティ『七人の使者・神を見た犬 他十三篇』岩波文庫(13)
 先月の『タタール人の砂漠』に続いて、2ヶ月連続のブッツァーティです。まさかブッツァーティが岩波文庫に収録されるとは……。
『七人の使者』河出書房・モダン・クラシックス(74)/河出書房(90)の文庫化ですが、「Lで始まるもの」が割愛されています。
 初刊本と新装版を持っているのに文庫本も買うのは、もちろんショートショートの資料だからです。
七人の使者・神を見た犬.jpg 七人の使者.jpg 七人の使者(新装版).jpg
◎西崎憲『世界の果ての庭 ショート・ストーリーズ』創元SF文庫(13)
 日本ファンタジーノベル大賞を受賞した傑作(新潮社/02)の文庫化です。初刊本を持っているのに文庫本も買うのは、もちろんショートショートの資料だからです。
世界の果ての庭(文庫).jpg 世界の果ての庭.jpg
 実はほかにも目的の本はありました。ロアルド・ダール『あなたに似た人』の新訳版(全2冊/田口俊樹訳)です。1週間ほど前に発売されているはずなのですが、初回入荷分は売れてしまったのか、残念ながら店頭にはありませんでした。
『あなたに似た人』は最初、ハヤカワ・ポケット・ミステリ(57)で刊行され、のちにハヤカワ・ミステリ文庫(76)に収録されました(田村隆一訳)。初刊本や文庫本を持っているのに新訳版を買おうと思うのは、もちろんショートショートの資料だからです。
あなたに似た人.jpg あなたに似た人(文庫).jpg
 しかし、正確に言えば、それだけではありません。新訳であることもそうですが、この2冊本には(第2巻に)「ああ生命の妙なる神秘よ」「廃墟にて」の2編が増補されているんですよね。
 この2編はダールの邦訳短編集には初収録です。過去の邦訳データは――
「ああ生命の妙なる神秘よ」
 「ミステリマガジン」1991年4月号(420号)
「廃墟にて」
 「ミステリマガジン」1967年3月号(131号)
 ジュディス・メリル編『年刊SF傑作選6』創元推理文庫(75)
 矢野浩三郎・青木日出夫『世界の怪談集 怖い話をするときに』KKベストセラーズ(70)/『世界の怪談 怖い話をするときに』ワニの豆本(78)/『世界の怪談 怖い話をするときに』ワニ文庫(84)*それぞれ再編集。
ミステリマガジン420号.jpg ミステリマガジン131号.jpg 年刊SF傑作選6.jpg
世界の怪談集.jpg 世界の怪談(ワニの豆本).jpg 世界の怪談(ワニ文庫).jpg
 増補の2編も既読なのに新訳版を買おうと思うのは、もちろんショートショートの資料だからです。
 ことに「廃墟にて」(文庫本でしたら、わずか2ページ)はショートショートの傑作です。ご存じない方には、ぜひぜひ! と声を大にしてお勧めします。
 この記事のタイトルが「廃墟にて」となっているのは、そういうことです。 
コメント(1) 

コメント 1

高井 信

 ダール「廃墟にて」を久しぶりに読み返し、ふと中原涼のショートショート「超人的な生命力」を思い出しました。まさに人喰いショートショートの双璧ですね。(『笑う宇宙』地人書館(89)に収録)
 中原涼のショートショート集については以下を。
http://short-short.blog.so-net.ne.jp/2010-05-26
by 高井 信 (2013-05-18 21:18) 

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