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『ビールうんちく読本』

 暑い日が続きますねえ。9月にはいっても連日の猛暑日で、数日前には38度なんて馬鹿げた数字が発表されています。>名古屋
 この暑さのせいで、今夏のビール消費量は半端ではありません。例年の倍近く飲んでいるような気がします。もっとも、裏を返せば、それだけビールがおいしく感じられるわけで、これは唯一、猛暑の恩恵でありますね。
 しかし、ふと思えば……。私はビールのことを何も知りません。――冷たくて、おいしくて、適度に酔っ払える炭酸飲料。それくらいの認識しかないんですね。
 こんな大好きな飲み物のことを知らないなんて、ビールに申しわけないのではないでしょうか。
 というわけで、濱口和夫『ビールうんちく読本 ニガ味にこだわる男たちへの48話』PHP研究所(88)/PHP文庫(92)を手に取りました。サッポロビールの社員である著者がビールのウンチクを語った本です。
 まさに、目からウロコの連続! とっても楽しいウンチク本ですが、それはさておき――
 ただそれだけの本でしたら、記事に書こうとは思いません。実はこの著者の濱口和夫はSF作家なんですね。ペンネームは久野四郎と書けば、「おっ」と思われる方も多いでしょう。そう、このブログでも採り上げたことのある、あの久野四郎なんです。
 公式に発表されているわけではありませんが、久野四郎は初期のころ浜口和夫名義で作品を発表していたこともありますし、両者の経歴を見れば、ほぼ間違いなく同一人物と推測されます。
ビールうんちく読本.jpg ビールうんちく読本(文庫).jpg 夢判断.jpg 砂上の影.jpg
 SF作家・久野四郎としての著作は『夢判断』ハヤカワSFシリーズ(68)と、その改題文庫化『砂上の影』ハヤカワ文庫JA(75)だけですが、いろいろなアンソロジーでちょくちょく目にしているような記憶があります。
 ちょっと気になり、うちの蔵書とネット検索で久野四郎作品を収録しているアンソロジーを調査してみました。

5分間サスペンス.jpg◎福島正実編著『5分間サスペンス』日本文芸社(65)/日本文芸社・5分間文庫(67)
「くり返し」を収録。浜口和夫名義。書影は5分間文庫版です(文庫といっても新書サイズ)。
◎福島正実編著『五分間スリラー』日本文芸社(65)
「見える理由は……」を収録。浜口和夫名義。
◎福島正実編『SFエロチック ミステリ』秋田書店・サンデー・ノベルス(66)
「結婚エージェント」を収録。浜口和夫名義。
◎福島正実編『SFエロチックの夜』秋田書店・サンデー・ノベルス(67)
「再発」を収録。
◎都筑道夫監修『海底の人魚』新風出版社・5分間新書(69)
「童話の時代」と「五分前」を収録。
5分間スリラー.jpg SFエロチックミステリ.jpg SFエロチックの夜.jpg 海底の人魚.jpg
◎福島正実編『日本SFの世界』角川書店(77)
「夢判断」を収録。
◎福島正実編『SFファンタジー傑作選』旺文社文庫(84)
「再発」を収録。
◎福島正実編『SFミステリ傑作選』旺文社文庫(84)
「結婚エージェント」を収録。
◎関口苑生・縄田一男・長谷部史親・松岡智恵編『恐怖小説コレクションⅢ 夢』新芸術社(89)
「いなかった男」を収録。
日本SFの世界.jpg SFファンタジー傑作選.jpg SFミステリ傑作選.jpg 恐怖小説コレクションⅢ夢.jpg
 以上、抜けはないと思うんですが、やっつけ仕事ですので、あまり自信はありません。

【追記】2011年10月9日
 新たな資料を入手。書影を追加し、細かなミスを修正しました。
コメント(4) 

コメント 4

山本孝一

いやまぁ久野四郎とは懐かしい。この人の短編、大好きでした。
『夢判断』も『砂上の影』も持っていないのですが。
ビール会社の社員だということは聞いていたのですが、浜口和夫と同一人物とは
知りませんでした。
昔、SFMに浜口和夫名義で「悪酔い」という短編が掲載されてますが
あれは久野四郎さんの作品だったのですね。
浜口和夫は半村良さんの別名かなと思っていたこともありました。
ファンにとっては久野四郎という人は、福島正美SFM編集長の
お友達というイメージでした。
ですから福島さんが編集長を降りられてからは久野さんはSFMに
書かなくなったのかなぁと思っておりました。
SFMでしか読んでいませんが、読みやすいアイデアストーリーで
なぜもっと載らないのだろうと思っていたものでした。
ちなみに私の一番好きなビールはサッポロ黒ラベルです。
桂雀三郎師がサッポロ黒ラベルを歌った「それぞれの味」は
ホロリとするいい歌ですよ。
by 山本孝一 (2010-09-08 19:26) 

高井 信

 おお、山本さんも久野四郎のファンでしたか。
 きっちりと調べたわけではありませんが、久野四郎の作家としての実質的な活動期間は1964年~69年で、総作品数は25編くらい(短編ばかり)のようです。それでも根強いファンが多いのは、作品の魅力ゆえでしょうね。
 福島さんのお友だちかどうかは知りませんけれど、アンソロジーへの収録を見ると、福島さんが高く評価されていたのは確かなようです。
 私も好きな作家ですから、再評価されると嬉しいのですが……。

>ちなみに私の一番好きなビールはサッポロ黒ラベルです。
 あ、私も(笑)。
by 高井 信 (2010-09-08 21:38) 

雫石鉄也

私も、久野四郎は大好きな作家でした。
山本さんのおっしゃるように、福島編集長時代のSFマガジンに盛んに久野四郎の短編が載ってましたね。
私は「夢判断」を持っています。
http://blog.goo.ne.jp/totuzen703/e/dbe37666286629b0cc5ecaf600353e94
「夢判断」のあとがきによれば、久野さんが編集するPR誌に、福島さんに原稿依頼して、その見返りに久野さんがSFマガジンに書いたそうです。
私は、なんといってもビールはエビスです。
by 雫石鉄也 (2010-09-09 09:33) 

高井 信

 私が「SFマガジン」を読み始めたころ、すでに久野四郎は作家活動を停止していました。山本さんや雫石さんは、「SFマガジン」に掲載された久野作品をリアルタイムで読まれているんですよね。
 致し方のないことですが、羨ましいです。リアルタイム体験と追体験では、やはり違いますから。
by 高井 信 (2010-09-09 18:04) 

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