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光瀬龍のショートショート集

 星新一、眉村卓と来れば、次は筒井康隆、豊田有恒、あるいは小松左京となるのが普通でしょうが、今日は光瀬龍です。
 かつてSF=ショートショートと思われていた時代があり、当時のSF作家たち(いわゆる日本SF第一世代)はその資質にかかわらずショートショートを書いて(書かされて?)いました。光瀬龍の場合、どちらかと言えば「書かされて」でしょう。
 ほかのSF作家たちもそうであるように、光瀬龍も決して少なくはない数のショートショートを書いています。
 ショートショート集は『見えない壁』立風書房(79)だけですが、『立ちどまれば・死』ソノラマ文庫(78)には3短編とともに12編のショートショートが収録されています。2冊とも絶版で、古書店でもあまり見ない本ではありますが、どこかで見かけられましたら、ぜひ。
見えない壁.JPG 立ち止まれば・死.JPG
 ――と光瀬龍のことを書きたくなったのは、扶桑社文庫の新刊『多聞寺討伐』を眺めていたからでありまして……。
多聞寺討伐(扶桑社文庫).JPG ショートショート集ではなく、ここで紹介するのは場違いかなとも思いますが、あまりにも懐かしいので、紹介してしまいます。
 この本は光瀬龍の時代SF傑作集です。ハヤカワ文庫JAの同題短編集(74)に収録されていた全5編を中心に、『歌麿さま参る』ハヤカワ文庫JA(76)から3編、『消えた神の顔』ハヤカワ文庫JA(79)から1編、『火星兵団を撃滅せよ』徳間書店(80)/徳間文庫(85)から1編、さらに単行本未収録の「大江戸打首異聞」を加えた計11編。われわれ世代のSFファンにとっては、懐かしくてたまらない作品が並んでいます。
多聞寺討伐.JPG 歌麿さま参る.JPG 消えた神の顔.JPG 火星兵団を撃滅せよ(単行本).JPG
 驚いたのですが、ハヤカワ文庫JAの『多聞寺討伐』は1974年の刊行から1度も再刊されていなかったのですね。今回、大幅増補された『多聞寺討伐』が刊行されたことにより、若いSFファンも容易に手にすることができるようになりました。光瀬龍と言えば宇宙SFが有名ですけれど、時代SFにも魅力たっぷり。まだ読んだことのないという方は、ぜひ手に取ってみてください。

 扶桑社文庫からは同時に筒井康隆『馬の首風雲録』も出ています。これもまた懐かしいですねえ。こちらは何度も再刊されている長編ですから、読まれた方も多いと思います。
 私が読んだのはハヤカワSF文庫版(72)です。発行されてすぐに読んだ記憶がありますから、え~と、37年前ですか。
 今回の扶桑社文庫版の表紙は、そのハヤカワSF文庫版と同じ。思わず書棚からハヤカワSF文庫を取り出してしまいました。2枚の書影、並べておきます。
馬の首風雲録(扶桑社文庫).JPG 馬の首風雲録.JPG ゑゐり庵綺譚(単行本).JPG ゑゐり庵綺譚.JPG
 扶桑社文庫では、これからも続々と過去の名作SFを再刊していくようです。次回の刊行予定は6月30日で、作品は梶尾真治『ゑゐり庵綺譚』――ショートショートと短編の連作集ですが、ショートショートの比率は非常に高く、連作ショートショート集とも言える本です。これ、面白かったですねえ。
 徳間書店の初刊本(86)には14編収録、徳間文庫(92)には2編増補されて16編。今度の扶桑社文庫版にも新たな増補があるのでしょうか。
 楽しみです。
コメント(4) 

コメント 4

高井 信

 扶桑社文庫の2冊は版元よりご献本いただいたものです。担当者さま、ありがとうございます。
 こういうきっかけがないと、光瀬龍のショートショート集を採り上げるのは、もっと先になったと思います。『ショートショートの世界』では、ショートショートの作家として光瀬龍の名前は挙げたものの具体的な書名は挙げませんでしたから、いつかは紹介したいと思っていました。
by 高井 信 (2009-05-30 14:23) 

斎藤肇

 光瀬龍でショートショート、と言われて、「あ、たしか秋元文庫で読んだ記憶がある」と思ったのですが、ネット検索してみると、どうやら「SFショートショート傑作選」というアンソロジーだったようです。なんか、そんなのも読んだような記憶が・・・。
 しかし、具体的な作品やらアイデアはまったく思い出せなかったりするのでした。
 秋元文庫って、ジュブナイルの文庫でしたから、長編の方が面白かったような記憶もあります。
by 斎藤肇 (2009-05-30 23:25) 

t-kita

私も秋元文庫で読みました。実物もたぶん書庫にあると思います。
福島正実、眉村卓、光瀬龍、石川喬司(違ったかもしれませんが)が、地方新聞の子ども向けのページに交代で書いたものがベースになっています。
私は小学生のころ、このページに掲載されていたショートショートを切り抜いて保存していました。ただ、光瀬さんのショートショートだけなぜかSFではなくミステリでした。だから私は光瀬さんはミステリ作家でもあると(SF作家としては「少年ドラマ」の原作者や学習誌の「よみもの特集号」などで目にしてましたから)思い込んでいた時期がありますね。
あれはたぶん未収録のままでしょう。「光瀬龍のショート・ミステリ」なんて誰も思いもよらないでしょうから。
by t-kita (2009-05-30 23:58) 

高井 信

 懐かしい話題をありがとうございます。>斎藤さん、喜多さん
 福島正実編『SFショートショート傑作集』秋元文庫(76)は他作家との合集ですから挙げませんでした。メンバーは内田庶、福島正実、眉村卓、光瀬龍です。
 これまた合集ですが、『SF未来戦記 全艦発進せよ!』徳間書店(78)/徳間文庫(86)もあります。こちらは光瀬龍、福島正実、高橋泰邦、今日泊亜蘭、眉村卓です。
>あれはたぶん未収録のままでしょう。
 記事に挙げた2冊に収録された作品もあるかもしれませんが、そこまでは調査していないので、ハテナ? です。
by 高井 信 (2009-05-31 05:21) 

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