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『眼玉は行動する』

 アイデアというものは、異質なものどうしの混在からうまれる。そして、異質の度合が大きければ大きいほどアイデアとしての効果も大きい。これはSF作家であり科学者でもあるアメリカのアイザック・アシモフの書いていることである。理屈はまさにその通りなのだが、現実にそれをやるとなると、まことに容易ではない。当のアシモフでさえ、あっというアイデアの作品となると、数が知れている。
 境田昭造はアシモフがこの指摘をやるはるか以前にこの原則を身につけ、作品化しているのだから驚嘆すべきことだ。江戸趣味とロケットなどという現代の極とを内部において混在させるなんてことは、常識で固まった人には不可能。あまりにも異質である。彼の精神の柔軟さのなせるわざで、アイデアのつきない秘密も、またここにあるわけである。

眼玉は行動する.jpg 以上、『眼玉は行動する 境田昭造漫画集』筑摩書房(71)に星新一が寄せた「解説」からの抜粋です。
 この本、少し前に友人から「星さんが解説を書いているよ」と教えてもらい、「へえ。星さんが解説を書く漫画集か。それは読まなければ」と購入したものです。
 本を手にして、まず最初に「解説」を読みました。ここまでの高評価となると、期待が高まっちゃいますよね。
 で、期待を裏切られることはありませんでした。
 面白いなあ。もっと読みたいなあ。
 さっそく著作を調査し、境田昭造には私家版の漫画集がたくさんあると判明しました。
 適当に入手し、楽しんでおります。
魔女の花束.jpg 眼玉の四季.jpg 天女の目眩.jpg 佳人革命.jpg
コメント(4) 

コメント 4

北原尚彦

 境田昭造なら何か1冊持ってたな……と調べたら、『ショック氏(附・拳銃図鑑)』という五百部限定の私家版を以前購入しておりました。ブラックな四コマ漫画と、拳銃図鑑を兼ねた不思議な本でした。
 「ヒッチコック・マガジン」にでも連載されてたのかな、という感じの雰囲気です。
by 北原尚彦 (2011-09-11 19:58) 

高井 信

 簡単に調査しただけですが、『ショック氏』は境田昭造の最も古い私家版のようです(1961年刊)。所有されている1冊が『ショック氏』とは、さすがですね。
>五百部限定の私家版
 これは意外でした。というのも、私の所有している私家版はすべて限定357部なんですよ。

『眼玉は行動する』にも、ショック氏と主人公とする漫画(4コマ)が収録されています。
> 「ヒッチコック・マガジン」にでも連載されてたのかな、
 あ。確かに。なんでも拳銃で解決しちゃうんですよね(笑)。>ショック氏
 星さんは解説で――「この主人公はどことなく暗鬱ムードをただよわせていて、アイデア自体のからっとしたドライさとの対比が、異様な効果をあげている。この手法そのものが大変なアイデアだと、私は思っている」と述べています。
 クールな風貌と雰囲気のショック氏、実はオチャメでして、この落差が私は好きです。
by 高井 信 (2011-09-11 21:28) 

山本孝一

いやぁ、高井さんのブログで境田昭造の話がでるとは思いませんでした。
まして星さんが漫画集に解説を書かれていたなんて初めて聞きました。
私は『眼玉は行動する』はありませんが、高井さんが書影を紹介されいた4冊と、『女神の欠伸』(1984年刊)を持ってます。
私が境田昭造の漫画集を買ったのは大阪の青空書房でしたが、それまでこの漫画家の名前を知らなくて店主の坂本さんから「ご存知ないですか?当時は名の知れた漫画家でしたよ」と言われました。
たしかに器用な人ですね。ヒトコマ漫画から似顔絵まで。
日本ではこういった大人向きの漫画本が出ないですね。
ヒトコマ漫画のチャールズ・アダムスの本も出せば売れると思うのですが。
小島功さんのファンなのですが、この人の本もめったにでませんねぇ。
by 山本孝一 (2011-09-12 09:02) 

高井 信

 山本さんもお好きですか。ほんと、いいですよね。
 私の場合、星さんが解説を書いていなければ、読もうとは思わなかったわけで、「星さん、ありがとう」です。

 小島功は私も好きです。特に『孤島ナンセンス』は大好き。いずれブログで採り上げるかも。
by 高井 信 (2011-09-12 09:59) 

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