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「香水の未来」

 今日あたり、『江戸門戸狂人ショートショート集』がお手元に届くと思います。(ほかのものと一緒に、というご希望の方には未発送)
 とにかくまあ、とんでもないものを作ってしまったなあという思いが胸に込み上げていますが、それはともかく。
 この本の「あとがき」に、以下のように書きました。

 江戸門戸狂人名義で書いたのは、本書に収録したショートショート以外には、のちに五十枚近い短編となる「デパート殺人事件」の初稿(冊子化済み)、結局完成しなかった中編「たいむましんにのって」にまつわるあれこれ(書き出し原稿やプロット。すべて冊子化済み)、それと「ピノーキオ」(タイトルの通り、『ピノキオ』のパロディ)、「奇蹟を行なう男(前篇)」(後篇は書かれず)だけです。ちなみに、「ピノーキオ」は一九七三年十二月二十八日に脱稿。これが江戸門戸狂人名義の最後の作品となりましょう。

 いやしかし、1作だけ意識的に排除した作品があります。
 タイトルは「香水の未来」(「かぐわしきみらい」のルビ付き)で、8枚のショートショートです。書いたのは1973年12月9日。
香水の未来.jpg タイトルの横に「筒井康隆『にぎやかな未来』のパロディ」と書かれていますが、実はこれ、パロディでも何でもなくて、ほとんど書写に近いんですよね。「にぎやかな未来」の「音」に関する箇所を「臭い」に置き換えただけで、文章も「にぎやかな未来」そのまんま。当然のことながら結末の1行は「現代でもっとも高価なものは、無臭です」という、もはや盗作とすら言えないような、そんなものです。
 どうしようもない代物なんですが、この書写作業(あえて「書写」と言い切ります)をしたことは、その後の創作活動において非常に有意義だったと思います。ただ書くだけではなく、原稿を書く際の基本的なルール、それに文体やリズムを意識するようになりましたから。
 ほぼ40年前ですか。ふう……。

 そんなこんなで――
『江戸門戸狂人ショートショート集』、寛容の心で読んでいただければ……と思います。>お送りした皆さん

【追記】
 あ。
「香水の未来」を書いた12月9日って、ほかに4本のショートショート(こちらはオリジナル)を書いているのですね。調べてみますと、やはり日曜日でした。休みとはいえ、短い作品ばかりとはいえ、この数は……。この日、いったい何があったのでしょう。
コメント(4) 

コメント 4

森下一仁

『江戸門戸狂人ショートショート集』、本日拝受。
最初の2編ばかりを読ませてもらいましたが、アイデア、文章ともに上出来。なんという中学生(~高校1年)だったんでしょう!
あとの作品もじっくり楽しませていただきます。
ありがとうございました。
by 森下一仁 (2013-11-29 20:23) 

高井 信

 過分なお言葉をありがとうございます。確かに、15歳にしては悪くないかもしれませんけれど……やっぱり恥ずかしい(笑)。
by 高井 信 (2013-11-29 22:09) 

橋本喬木

昨日、職場から変えると、ポストに入っていました。
で、早速、読ませていただきました。

「楽しんで書いてますねぇ」
読んでいる方にも、その楽しさが伝わってきました。

ホッっと、ほんわか気分に浸れました。
楽しい読書時間、ありがとうございました。
by 橋本喬木 (2013-12-01 09:37) 

高井 信

 考えてみると、あのころが一番楽しかったかもしれません。何も考えずに、ただ小説(らしきもの)を書いているという行為が嬉しかったですから。
by 高井 信 (2013-12-01 17:03) 

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