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『海底二万里』の謎

 ゆえあってハヤカワ・SF・シリーズを眺めていまして、ふと思いました。高校生か大学生のころ、「ん? 装幀が違うぞ」と購入し、いまだに疑問がくすぶっている本があるのです。

海底二万里.jpg 海底二万哩.jpg 海底二万リーグ.jpg 背.jpg
『海底二万里』HAYAKAWA POCKET BOOKS 512(昭和30年4月15日 印刷発行)
 村上啓夫訳。装幀:浜田稔。「里」には「リーグ」とルビ。背には「ポケットブック」、奥付には「HAYAKAWA POCKET BOOKS №510」とあります。定価200円。
『海底二万哩』HAYAKAWA POCKET BOOKS 512(昭和30年12月31日 印刷発行)
 村上啓夫訳。装幀:中根良夫。背には「H・P・B」、奥付には「HAYAKAWA POCKET BOOKS №510」とあります。定価200円。
『海底二万リーグ』ハヤカワ・SF・シリーズ 3034(昭和37年6月30日発行)
 村上啓夫訳。装幀:中島靖侃。定価290円。

 ハヤカワ・SF・シリーズ版はともかく、ハヤカワ・ポケット・ブックの2冊ですね。わずか8ヵ月後に、タイトル変更の異装版が出ているのですよ。これには、いったいどういう意味があるのでしょうか。
 曖昧な記憶ですが、『海底二万里』を先に購入。1年も経たないうちに『海底二万哩』を買ったような気がします。こういう、ビミョーな差異のある異装版、大好きです(笑)。

【註】いつもは「ハヤカワSFシリーズ」と書いていますが、この記事に限り、正確さを重視して「ハヤカワ・SF・シリーズ」と表記しています。

【追記】
世界SF全集.jpg はたと思いついて、村上啓夫訳の同作品、タイトルの変遷を調べました。
 早川書房・世界SF全集版(1970年1月31日初版発行)では『海底二万リーグ』になっています。また、これは現物確認していないのですが、講談社・世界名作全集版(1967年3月発行)では『海底二万里』となっているようです。
 つまり――
『海底二万里』('55)→『海底二万哩』('55)→『海底二万リーグ』('62)→『海底二万里』('67)→『海底二万リーグ』('70)
コメント(4) 

コメント 4

北原尚彦

『海底二万里』→『海底二万哩』の変更は、ディズニーの特撮映画の日本公開によるものだと思われます。
 映画邦題が『海底二万哩』ですし、表紙のノーチラス号も、映画準拠のものに変わっています。
 映画データベースで確認したところ、公開も1955年(昭和30年)12月。時期的にも合っていますね。
 現在ならばカバーを架け替えるところですよね。

↓(映画データベースのサイトです。)
http://www.allcinema.net/prog/show_c.php?num_c=4236
by 北原尚彦 (2011-11-13 16:01) 

高井 信

 うわっ。素早い!
 なるほど~。もう見事に納得しました。
 いやあ、書いてみるものですね。35年来の(←たぶん)疑問が解け、すっきりしました。
 ありがとうございます!
by 高井 信 (2011-11-13 16:12) 

山本孝一

北原さんのおっしゃる通りだと思います。
日本公開は、手もとのレーザーディスクの資料によると
昭和30年12月23日となってます。
表紙のノーチラス号の絵もディズニー映画と同じです。
持っているディズニーの本に、シネマスコープのフィルムを
35ミリフィルムに焼いたため、やや寸詰まりのノーチラス号の
写真がありますが、その姿にそっくり。
そのスチール写真を見て描いたのじゃないかなぁと推測してます。
ちなみに私は公開時に親父に連れられてこの映画を見てますが、
当時私は5歳。私のSF体験の原点のひとつです。

by 山本孝一 (2011-11-14 21:49) 

高井 信

 ご確認、ありがとうございます。
 映画化に合わせてタイトルや装幀を変更するのは、今も昔も同じなんですね。
by 高井 信 (2011-11-15 08:36) 

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