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『太陽が消えちゃう』

 昨日の記事の続きです。
 SF第2世代のコンビでは、東の横田順彌・鏡明、西の堀晃・かんべむさしが双璧と思います。
 で、はたと思いました。――堀・かんべコンビには2冊の共著があります(→この記事参照)が、横田・鏡コンビには?
 つらつらと考えて、2人だけの共著ではありませんが――
◎川又千秋・横田順彌・岡田英明『気絶悶絶三つ巴リレーSF 太陽が消えちゃう』いんなあとりっぷ社(77)【註】岡田英明=鏡明
 当時の若手SF作家によるリレー小説(長編SF)です。懐かしいですねえ。
 横田・鏡コンビも参加しているリレー小説となりますと、かんべむさし・堀晃・川又千秋・鏡明・横田順彌による「神々の星」「双子宇宙(パラレル・プラネット)」もありましたね。横田順彌『ヨコジュンのわんだあブック』角川文庫(85)に収録です。
太陽が消えちゃう.jpg サイン.jpg ヨコジュンのわんだあブック.jpg
 中央の写真は、『太陽が消えちゃう』にいただいたサインです。実はこの本、表に名前は出ていませんが、かんべむさしが初回を担当しているんですよ。(「あとがき大放談」で暴露)
 何となく「あとがき大放談」を眺めていて、川又千秋が「この小説は俺の処女単行本」と発言しているのに気がつきました。
 そ、そうでしたか!?(驚)
 時の流れを思い切り感じております。

 以下、余談です。
 この4人の処女出版(単独の著作)を調べてみました。
◎かんべむさし
『決戦・日本シリーズ』ハヤカワ文庫JA(76年6月)ですが、ほぼ同時期に『俺はロンメルだ』いんなあとりっぷ社(76年7月)も刊行。後者の帯には「SF界待望の新人初の作品集」と書かれています。厳密には間違っていますが、2冊とも処女出版と言ってもいいかもしれません。
◎横田順彌
『宇宙ゴミ大戦争』ハヤカワ文庫JA(77年1月)です。2冊目は『SF事典 異次元世界の扉を開く』広済堂ブックス(77年5月)。どちらも印象深いです。
決戦・日本シリーズ.jpg 俺はロンメルだ.jpg 宇宙ゴミ大戦争.jpg SF事典.jpg
◎川又千秋
『夢の戦士』鶴書房・SFベストセラーズ(79年3月)なんですが、私のイメージとしては2冊目の『海神の逆襲 コマンド・タンガロア』トクマノベルス(79年7月)が強いですね。こんなに面白い冒険SFを書く作家だったのか、と驚いたことを覚えています。ちなみに、『夢の戦士』には「ジュヴナイル第一作」、『海神の逆襲』には「処女長編」と書かれています。
◎鏡明
 作家としては『不死を狩る者』トクマノベルス(81年10月)ですが、翻訳家としての活動は古く、最初の訳書はA・メリット『蜃気楼の戦士』ハヤカワSF文庫(70年9月)です。
夢の戦士.jpg 海神の逆襲.jpg 不死を狩る者.jpg 蜃気楼の戦士.jpg
コメント(4) 

コメント 4

山本孝一

リレー小説というのは各作家の個性が出るのでうまくいくと実に楽しい作品になるのですが、昔、旧奇想天外誌に訳載された「契約」という作品は個性が強く出すぎていてよくわからなくなってました。
アシモフとかシェクリィとかブロックなんてそうそうたるメンバーが書いているのですが、たしかシェクリィがひっくり返し、さらに誰かがひっく返し、もうワケがわからなくなりました。
うまくいったと思うのは、ジャック・ウィリアムスン、ハミルトン、バインダーなんて当時のパルプSF誌の5人の人気作家が書いたThe Great Illusion(1936)「偉大なる幻影」という短編。
結末から書き始められたという『狂気じみた作品』(ウィリアムスン談)ということで、どんな話かと読みましたが途方もないオチのムチャクチャおもしろいSFでしたよ。
誰か訳してもらいたいものです。
いまはこんなお遊びがなかなかありませんね。
by 山本孝一 (2011-08-21 10:55) 

高井 信

「契約」ですか。旧「奇想天外」は読んでいたのですが、まるっきり覚えていません。調べてみると、掲載されたのは1974年5月号(第5号)でした。
 第1部 時の河を越えて ポール・アンダースン 矢野浩三郎訳
 第2部 翼を失くした戦士 アイザック・アジモフ 福島正実訳
 第3部 両性マシーンの欲望 ロバート・シェクリィ 伊藤典夫訳
 第4部 時間と空間の壁 マリィ・レンスター 浅倉久志訳
 第5部 永遠の戦いに似て ロバート・ブロック 小鷹信光訳
 作家だけではなく、翻訳家も豪華ですね。特別解説(伊藤典夫)によると、初出は「ファンタスティック」誌1960年7月号とのことです。

>うまくいったと思うのは、ジャック・ウィリアムスン、ハミルトン、
>バインダーなんて当時のパルプSF誌の5人の人気作家が書いた
>The Great Illusion(1936)「偉大なる幻影」という短編。
 あ。3人とも、大好きな作家です。
>誰か訳してもらいたいものです。
 同感!
by 高井 信 (2011-08-21 15:31) 

雫石鉄也

「太陽が消えちゃう」私の記憶に間違いがなければ、
雑誌「宣伝会議」に連載されたのではないでしょうか。この雑誌にSFが掲載されたのは、これが唯一だと思います。
かんべむさし、川又千秋、横田順彌、鏡明、みんな本業は広告業界人なんですね。
だから、「宣伝会議」に若手広告人のリレー小説ということで、広告専門誌「宣伝会議」にリレー小説を書いたのでしょう。
かくいう私も、当時はコピーライターをやっていました。

by 雫石鉄也 (2011-08-21 16:36) 

高井 信

 その通りです。よく覚えておられますね。毎度のことながら、雫石さんの記憶力には感心します。
by 高井 信 (2011-08-21 19:22) 

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