SSブログ

『ふたりはいい勝負』

 レオポルド・ショヴォー『ふたりはいい勝負』福音館書店(87)/福音館文庫(03)を読みました。〈ショヴォー氏とルノー君のお話集(全5巻)〉の第5巻です。
 父親であるショヴォー氏と息子ルノー君のかけあいで、物語が作られていきます。そのストーリーたるや、まさにナンセンス&シュール(笑)。どう展開していくのか、まったく想像できません。
 この楽しい感覚、どっかで味わったなあと記憶をごそごそ。すぐに――あ、橫田順彌だ。
「メグロの決死圏」(『脱線!たいむましん奇譚』講談社(78)/講談社文庫(81)に収録)とか「話にならない話」「続・話にならない話」(『寒い国へ行きたくないスパイ』徳間文庫(85)に収録)とかですね。
 そんな話が43編も収録。ショートショートかと問われたら、口ごもってしまいますが、ともあれ短くて面白い話がてんこ盛りです。
ふたりはいい勝負.jpg 脱線!たいむましん奇譚.jpg 寒い国へ行きたくないスパイ.jpg
 レオポルド・ショヴォーといえば、その編著『きつねのルナール』福音館書店(02)も(ショートショートの見地から)要チェックです。
 福本直之「解説――ルナールと『狐物語』の履歴書」によりますと、この本の原典『狐物語』は「狐のルナールを主人公とし、中世フランス語で書かれた、作者も時代も異なる三十数篇の物語に与えられた作品名」とのこと。おのおのの物語には原型やモデルが存在し、それはたとえば――
>古くは古代インドの説話集『パンチャタントラ』や『ヒトーパディーシャ』、そして
>『イソップ物語』などに見られる、民間に伝わっていた説話です。
 さらに――
> 中世のベストセラーであるこの作品は当然のことながら、後代へも大きな影響を
>残しています。そのもっとも有名なものが、十七世紀後半の、ラ=フォンテーヌの
>『寓話』です。
 とも書かれています。
『きつねのルナール』はショヴォー編の現代語版『狐物語』から22編を訳出したものです。児童書ですから、非常に平易で読みやすい文章で書かれています。ずるがしこいけど、どこか愛嬌があって憎めない狐(ルナール)の物語は魅力的です。ショートショートとは趣を異にしていますが、その先駆的作品群とは言えるでしょう。
 ちなみに、ショヴォーは「20世紀のラ=フォンテーヌ」と呼ばれているそうです。
きつねのルナール.jpg パンチャタントラ物語.jpg 寓話.jpg
コメント(0) 

コメント 0

コメントを書く

お名前:[必須]
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。