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「通信制警察」

 第31回小説推理新人賞の受賞作「通信制警察」を読みました(「小説推理」8月号掲載)。受賞者の耳目(みみ まなこ)は「小説現代」ショートショート・コンテストの常連入選者で、私が読もうと思ったのは、ただその一点の理由に尽きます。
小説推理8月号.JPG 実に変わった作品でして……。
 短編1編とショートショート3編から成っているんですが……。最初の短編「うー、うーうー……」は完全に独立しています。ショートショートのうち2編「通信制警察」と「在宅起訴」は連作です。で、最後のショートショート「誘拐犯」は独立しています。う~~~ん、これはいったいどういうことなのでしょう。この構成には首を傾げざるを得ません。
 いや、それぞれの話は面白いんですよ。短編「うー、うーうー……」は、とにかくシチュエーションがいいですね。こんな展開の小説は読んだことがなく、序盤から引き込まれます。もっとも、同じトーンが延々と続くので、中盤から飽きてきてしまいますけれど……。それを差し引いても、充分に楽しめました。
 ショートショート3編も、よくできています。よくできているとは思うんですが、なぜこの3編を付け加えたのか、さっぱりわかりません。応募規定は「80枚以内」であって、それより少なければ何枚でもいいわけです。にもかかわらず、なぜ? さらに言えば、ショートショートのタイトルが全体のタイトルになっているわけでして、この意図も不明です。
 う~~~~~~~~~~む、謎です。

 短編の新人賞をショートショートで受賞と言えば、1976年、第2回問題小説新人賞を「13」で受賞した津山紘一を思い出します。「13」はタイトルそのまま、13編のショートショートで構成された作品です。その後、津山紘一はショートショートや短編を数多く書き、ショートショート・ファンを楽しませてくれました。
 私としては、耳目にもショートショートを中心に書き続けてほしいと思いますが、当時と現在では出版界の事情が違いますから、難しいかもしれません。
 ともあれ、耳目の今後に注目します。
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