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『5分後に意外な結末』の顚末

 本来、こういうことはブログに書くべきではありませんが、今回、きっかけがブログ記事であり、経過を途中までは報告。しかしどうやら、その報告を訂正しなければならないようですので、あえて書くことにしました。説明責任は果たさないと。

 そもそものきっかけは昨年12月20日、私がブログに書いた記事『5分後に意外な結末①赤い悪夢』でした(→この記事)。要するに、こんなの盗作ではないか、と。
 その翌々日、担当編集者からメールが届きました。いろいろと事情(首を傾げるような言いわけですが)が書いてあり、もっと説明したいから電話番号を教えてくれ、と。(私のメールアドレスは、私の知人から聞いたとのこと)
 電話番号を知らせたら、すぐに電話がかかってきました。
 そのときのことは、今年1月28日、(簡単にですけど)ブログに書いています(→この記事)。引用しましょう。

・高井のブログを読んで、驚いた。盗作の意図など全くない。原典の書かれていない作品は、作者不明のもの。「箱のボタン」も、作品の選定と翻案は翻案者に任せてあるので具体的にはわからないが、どこかに作者不詳で掲載されていたものであるはず。
 とのこと。そうだったのか。――と驚いたり呆れたり。
「事情はわかりましたが、やはりこれはまずいですよ」
「そう思います。全作品の原典を翻案者に確認し、これからは適切に対処します」
「ぜひそうしてください。まずは『箱のボタン』の出典ですね。誰かがリチャード・マシスンの短編『運命のボタン』そっくりの話を作者名を明記せず、何かに掲載した。翻案の方がそれを読み、『箱のボタン』を書いたわけですよね」
「そういうことです」
「そんな作品がどこに掲載されているのか、非常に気になります。判明したら教えてください」
 でまあ、待っておりますが、いまだに連絡はありません。担当者さん、もしこの記事をお読みでしたら、ぜひ状況をお知らせください。
 というようなことがありまして、本日、新刊書店に行ってきました。
◎『5分後に意外な結末②青いミステリー』学研(13)
◎『5分後に意外な結末③白い恐怖』学研(13)
◎『5分後に意外な結末④黒いユーモア』学研(14)
◎『5分後に意外な結末⑤黄色い悲喜劇』学研(14)
 さっき帰宅したばかりで、まだざっと目次を眺めただけの段階ですが……。
 どっかで見たようなタイトルがいくつも並んでいます。まずは適当に、気になるタイトルの原典の有無をチェックをしました。また今回も、原典の書かれているものもあれば書かれていないものもあり……。
 どっかで見たタイトルの作品のなかで、たとえば2巻の「警官と賛美歌」とか5巻の「賢者の贈り物」とか、原典が書かれていません。担当さんの説明によれば、原典のないものは作者不詳とのことですけれど、ほんとですか? というか、これを知りませんか?
 リチャード・マシスンを読んでないのは、わからないことはないですが、これは……。勉強不足では済まないような気がします。

 当該記事のコメント欄に書きましたように、その翌日(1月29日)、担当編集者より電話がありました。
 協力を要請されたこともあり、ブログには何も書きませんでしたが、実はその電話、またもごちゃごちゃと言いわけでした。O・ヘンリーに関しては記載漏れとか。
 そのようなことがあって、2月11日に担当編集者が来名。会うことになりました。会うに至る経緯についてもいろいろあるのですが、まあ別件ですから、ここに書くのは控えます。(→この記事冒頭)
 最初に連絡のあった昨年末から驚き、呆れっぱなしですが、会って話しても同様でした。
・「箱のボタン」の原典について尋ねると、「自分がネットで見つけ、それを翻案するように指示した」との返事。
 え? 前に電話で「翻案者に任せてあるから、わからない」と言ってたのでは? 自分でやったことを忘れる? それに、私は「この作品は特に気になるから、どこに掲載されていたのか判明したら教えてくれ」と頼んだはず。こちらから尋ねるまで言わないのは、なぜ?
 いや、それ以前の問題として、ネットの書き込みを検証もせずに使うなんて……。
・「星新一ショートショート・コンテスト入選作とそっくりの話もありましたよ。もちろん原典不記載で」と話したのですが、「あ、そうですか」だけで、「どれ?」と尋ねられることはありませんでした。ほんとに原典チェックする気があるんかな。つーか、まだ調査していないのかよ。
・何かの弾みで、「昨年、星さんの未収録作品集『つぎはぎプラネット』編集のお手伝いをして」と話したら、「え? そんな本が出てたんですか」。
 うそ! ショートショートの大ファンで、星新一もほとんど読んでるって言ってなかった? あ、でも、大学出てから小説はほとんど読んでないとも言ってたなあ。――って、20年以上も読んでないんだよね。それでショートショート大好きって……。口あんぐり。
・「もしかすると、誰かが星さんのショートショートを真似して、サイトに掲載しているかもしれませんよ」と警告したら、「星新一はほとんど読んでますから、大丈夫」。
 え? ほとんど? それに、読んだのって20年以上前だよね。そんなのを覚えてると思ってるの? 20年以上前に「ほとんど」を読んだから、全作品を把握・記憶している? 呆れて、何も言えませんでした。
 以上。
 冗談と思われるかもしれませんけれど、すべて真実です。
 私が提言しているのは、ごく当たり前のことばかりです。
・翻案というならば原典を明記すべき。
・担当編集が原典を把握していない作品については翻案者に確認する。
・原作者の存在が明らかな作品(「箱のボタン」など)については、きっちりと著作権所有者に謝罪し、改めて使用の許可を得る。
・ネットの書き込みを検証もせずに使うのは危険。というか、やってはならない行為。ネットが原典であるものに関しては、確実に作者不詳と判明しない限り、使ってはならない。
 その後、この件に関して全く連絡がなく、約1ヶ月後の3月9日、問い合わせメールを出しましたが、2週間が経っても返事はありません。私には返事をする気がないのか、あるいは単純に、この件に関して対処する気がないのか。
 原典調査なんて、その気になれば、1週間もかからないと思うんですよね。翻案担当者に確認するだけですから、急げば1日で終わる。もしかしたら、調査なんてしていなくて、だから返事ができないのかも。そもそも、著作権無視を重大なこととは認識していなく、このまま放っておいても構わないと考えているのかも。
 真実は知りませんけれど、状況を教えてくれなければ、私には手の打ちようがありません。最初に原典を確認するよう提言してから、すでに3ヶ月が経ったにもかかわらず、この状況。
 もともと、私はこのシリーズとは無関係なのです。こんなことに何ヶ月も関わっているのは馬鹿らしいので、今後、私は関与しないことにします。
 このような結果になってしまい、私にご期待くださった皆さまには申しわけなく思いますが、私は何度も提言しました。その点、ご理解をお願いいたします。
 ということで、これで説明責任は果たしたと思います。何か疑問点があれば、お尋ねください。わかる限り、お答えいたします。

 なお、ブログに事情を書く件、担当編集さんには昨日の朝、メールで連絡してあります。

【追記】
 正確さを欠いていることに気がつきましたので、補足します。
 マシスンの件ですが、1月29日の電話の際、ネットから採ったという話は聞いていたのです。ただ、詳細は「翻案者に任せてあるから、わからない」と。
 ところが、2月11日に会ったときに確認すると、「自分がネットで見つけて、翻案者に指示した」と。
コメント(5) 

コメント 5

岩崎陽子

初めまして、高井さん。

「5分後に意外な結末」について拝見しました。
なるほど、とんでもない編集者ですね。
知らずにブログで紹介しましたが、削除しようかどうしようか迷っています。
何だか、だまされたようで悔しいです。
by 岩崎陽子 (2014-07-19 19:55) 

高井 信

 岩崎さん、いらっしゃいませ。
 これでも抑えているんですよ(苦笑)。
 企画自体はいいと思うんですが、問題は担当編集者ですね。著作権を重要と思っていないし、なぜだか自分はショートショートに詳しいと勘違いしている。
>何だか、だまされたようで悔しいです。
 こんな記事を書いてしまい、申しわけありません。ずいぶん我慢していたのですが……。
by 高井 信 (2014-07-19 22:32) 

武藤

高井様

初めまして、こちらのブログ、ロムっていました。
ショートミステリー好きな私にはとてもためになるブログです。
ところで「5分後に意外な結末①赤い悪夢」近所の本屋で平積みになっておりました。
発行を見ると今年の6月。
中身を確認したところ、ほとんどの作品に対して「西欧の小噺」などとなっており
例えば、高井さんの指摘した「箱のボタン」などの同様。
高井さんの指摘は全く反映されていないということです。
学研といえば、小学生のとき、科学と学習でお世話になった出版社でしたので、とても残念な気持ちです。
by 武藤 (2014-07-22 15:24) 

高井 信

 武藤さん、いらっしゃいませ。貴サイト、何度か訪れたことがあります。ラジオドラマの情報、貴重ですね。
 さて、ご報告をありがとうございます。
 6月発行ということは、重刷されているんですね。で、クレジット表記はないまま……。呆れて、ものも言えません。
 しかし、ここまで私をないがしろにしますか。勝手に電話してきて、いろいろ教えてくれと頼んでおきながら、そして、ちゃんと調査し、適切な処置をすると約束しておきながら。
 そういえば、この記事を書いたあと、「何を言っても言いわけになるので、何も言いません。ただただお詫びします」というような内容のメールが届いたなあ。
 実際は、言いわけすらできないのではないかと思っています。

 あ、そうそう。記事に――
> そのようなことがあって、2月11日に担当編集者が来名。会うことになりました。会うに至る経緯についてもいろいろあるのですが、まあ別件ですから、ここに書くのは控えます。
 もう、こうなったら控える必要もないので、書いてしまいましょう。1月下旬でしたか、こんな電話があったのです。
「高井さんに会って、話を聞きたい」
「話なら電話やメールで充分。こんなことで、わざわざ会う気はない。仕事の打ち合わせなら会う」
「仕事の打ち合わせです」
 で、会いましたが、仕事の打ち合わせなんて一切ありませんでした。その後も連絡がなく、「仕事の打ち合わせって、何だったんだ?」と尋ねたら、「お話を聞いて、企画が浮かんだ。上に検討してもらうから、しばらく待ってくれ」。もちろん、いまだに何も連絡はありません。
 県議といい都議といい編集といい、いやはや。
by 高井 信 (2014-07-22 16:26) 

高井 信

http://short-short.blog.so-net.ne.jp/2014-01-28
  ↑
 この記事のコメント欄に――
> 担当さんから内部事情を聞きました。詳細を書くのは控えますが、とにかく認識が甘かったと反省されていました。増刷されることがあれば、きっちりと原典が記載されることになると思います。
 うむむむむ……。
by 高井 信 (2014-07-22 16:49) 

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