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「ミラー・ボール」

 ふと思い出しました。
 星新一「ミラー・ボール」を読んだのは昨年5月です。そのとき、以下の記事をブログにアップしようと思ったのですが、勘のいい人は未収録短編集の企画に気がつくかもしれないと思い、取りやめました。
 いまなら問題ないので、アップいたします。

            *              *               *

 最相葉月『星新一 一〇〇一話をつくった人』新潮社(07)を読んだとき、すっごく気になる作品がありました。
 単行本版248ページ――

「ボッコちゃん」を書いた昭和三十三年には―中略―「セキストラ」の手法をそのまま応用した時事風俗臭の残るオムニバス形式の作品を純文学系の同人誌で発表している―中略―。
 新聞社の懸賞クイズを題材にとった、すべて手紙だけで構成される「ミラー・ボール」という作品である。掲載されたのは、劇場同人会の「劇場」第四号(昭和三十三年八月発行)だが、「劇場」のバックナンバーが保管されている東京駒場の日本近代文学館では「ミラー・ボール」の掲載された第四号だけが欠番となっており存在しない。一〇〇一編の中にも採用されておらず、その存在を知る読者はほとんどいない。新一は「セキストラ」の二番煎じととられかねない「ミラー・ボール」を試行錯誤の産物として抹消したかったのだろうか。

 どうです? 気になりませんか?
 あれから5年、ようやく「ミラー・ボール」を読むことができました。
 確かに「セキストラ」に似た手法で書かれた作品です。その後の星作品とはまるっきり違っていますが、『星新一 一〇〇一話をつくった人』に書かれている通りで、驚くには当たりません。驚くべきは、その長さです。
 昨年、星作品の初出リストを作りました(星新一公式サイトの「ホシヅル図書館」に掲載)。その後も調査は続行。新しい情報を入手するたびに修正していて、掲載した当初とは見違えるほどに充実しています(作品数は増え、初出不明作品は減り)が、それはさておき――
 昨年から今年にかけて、数多くの単行本未収録作品を読みました。未収録作品のほとんどは短く、例外的に長いのは「未来都市」だけだったのですが、「ミラー・ボール」はそれと同じくらいの長さがありそうです。正確なところはわかりませんが、(400字詰め原稿用紙で)50枚以上あるのではないでしょうか。
「セキストラ」の二番煎じ、と言えば言えます。傑作かと問われれば、「悪くはないけれど……」と言葉を濁さざるを得ません。しかし、つまらないわけでもなくて……。いかにも星新一らしい箴言がちりばめられていて、楽しく読むことができました。
 ともあれ、5年に及んだもやもやが晴れ、心すっきり。嬉しいです。
コメント(2) 

コメント 2

橘まるみ

 星新一「ミラー・ボール」(小説新潮・平成25年8月号)に似た企画は、中部日本放送系列の東京放送(954kHz)、「安住紳一郎の日曜天国」(http://www.tbs.co.jp/radio/nichiten/ )(毎週日曜10:00~11:55)で、「ミニマムロト2」として、全く同じではありませんが、実現しています。
「ミラー・ボール」と違って、00から99までの数字から選びます。
 聴取者の学者先生から「必勝法」の提供もありましたが、人が選ぶ数字には、
 無意識に2桁と考え、00から09までの数字を避けてしまう。
 10、20など、切りいい数字を避けてしまう。
 誕生日を選んでしまうので、01から31の数字が多くなる。
 などといった法則が、どうしても出て来るそうです。
 だから、作品にあったように、なかなか均等には、選んで貰えなさそうです。
 それにしても、火田七瀬のカルテみたいに消えていた作品が、どこから出て来たのか。
by 橘まるみ (2013-07-24 00:43) 

高井 信

 興味深い情報をありがとうございます。
> 無意識に2桁と考え、00から09までの数字を避けてしまう。
> 10、20など、切りいい数字を避けてしまう。
> 誕生日を選んでしまうので、01から31の数字が多くなる。
 言われてみれば、確かに。
by 高井 信 (2013-07-24 08:31) 

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