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『現代ブラジル文學代表作選』

 しばらく前から、気が向くと堀口大學訳『現代ブラジル文學代表作選』第一書房(41)を手に取り、収録されている作品を適当に拾い読みしていました。
 堀口大學と言えばフランス文学の翻訳で知られています。その堀口大學がなぜブラジルの小説を? と疑問に思いましたが、「はしがき」に――

現代ブラジル文学代表作選.jpg もともと『現代ブラジル文學代表作選』は、自國文學の海外紹介を目的に、ブラジル翰林院(Academia Brasileira de Letras)が會員セルソ・ヴィエイラ、ムシオ・レオン兩氏に嘱し、過去現在の會員の作中より撰せしめた一巻で、ルヰス・アニバル・ファルソンによる佛譯版は一九三八年巴里サジテェル書店の出版である。これには、當時ブラジル翰林院會長だつたソオザ博士その人が序文を寄せていられる。博士自身の希望で、唯一の例外として、氏の一作を別に選んだ外、邦譯の内容は、全部この佛譯版によるものである。

 と書かれていて、合点がいきました。ブラジル翰林院編のアンソロジーのフランス語版を訳したものなんですね。
 さて、この本は300ページ弱に31編が収録されています。もちろん、それぞれの作品は短く……(嬉)。
 最初、タイトルや出だしが面白そうな作品を選んで読んでいるうちは、わりと楽しめました。SFあり、ホラーあり、ナンセンスあり……と、なかなかバラエティに富んでいて、私好みの作品もあります。
 マシャド・アシス「寓話」――縫い針と縫い糸の口論(どっちが偉いか)が愉快。
 アリュエジオ・アゼヴィド「親ゆづり」――屁理屈親父が楽しい。最後のひと言、むちゃくちゃだなあ。
 パウロ・バレト「ボオル紙頭の男」――タイトルそのまんま(笑)。シュールとナンセンス。風刺も効いてるぞ。
 アルシデス・マイア「標的」――こういうエスカレートもの、好きだな。おお、期待通りの結末。
 ザヴィエエル・マルケス「人間の一生」――そうか。私は現在、犬なのか。そして将来は猿になるのか。
 とまあ、こんな感想を抱きながら読んでいたんですね。しかし、よくわからない(要するに、私好みではない)作品に当たる頻度が徐々に増えてきて、まだ半分くらいしか読んでいないんですが、読み進める意欲が薄れてきてしまいました。
 ほかに読みたい本もたくさんありますので、この本はいったん放置(苦笑)。ま、よくあることです。
堀口大學全集 補巻2.jpg ともあれ、私の好みは別として、ショートショート・アンソロジーと言えると思います。この時代(昭和16年)に刊行されたショートショート・アンソロジーとなれば、日本ショートショート出版史上、特筆すべき本であることは間違いないですね。
 ご存じの方は少ないと思いますので、とりあえず記事に書いておくことにしました。
 なお、この本は『堀口大學全集 補巻2』小澤書店(84)/日本図書センター(01)に収録されています。
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