SSブログ

「うごく顔」

 ここんところ、古本屋に足を運ぶ頻度が極端に減りました。私の探している本が売っていることは滅多になくて、もし売っていたとしても手の出る値段ではなく……という状態になってしまったのですね。
 今年にはいってからも、散歩がてら近所のブックオフは覗きましたけれど、いわゆる古本屋には一度も行かず。そういえば、名古屋唯一の古本街(鶴舞~上前津)にも半年近くご無沙汰しているような……。
 本日、外出したついでに古本屋を覗きました。今年初の古本屋というだけではなく、この店に赴くのもずいぶん久しぶりです。
 なんだか嬉しくて、店頭の105円均一コーナーを眺めていましたら、見慣れない雑誌が目につきました。――「うごく顔」創刊号(1959年1月1日発行)
 何気なく手に取り、目次を見ますと――
うごく顔.jpg 目次.jpg タイトルページ.jpg
 おおっ、カミ「人工処女膜紛失事件」!
 タイトルを見ただけでピンときました。「処女華受難」(ルーフォック・オルメスものの1編)でありましょう。
 当該ページを見ると、あらら、タイトルは「盗まれた人工処女膜事件」。雑誌の目次と本文ページでタイトルが異なることはよくありますが、ここまで違うのは珍しいですねえ(笑)。
 絵物語で、全8ページ。私の知っている「処女華受難」はカミには珍しく、かなり長い作品です。はて? となりましたが、作品の末尾に「編者蛇足――これは(中略)フランスのユーモア作家カミによって書かれた物語のダイジェストです」と書かれていて、なるほど納得。(編・塚本自然)
 この作品は日本で何度も紹介されていまして、うちにあるだけでも、以下の本や雑誌に収録(掲載)されています。
◎カミ『カミ傑作集 人生サーカス』白水社(36)――このときのタイトルは「衣裳簞笥の秘密」
◎水谷準訳『ふらんす粋艶集』日本出版協同株式会社(53)――このときのタイトルは「處女華受難」
◎水谷準著『金髪うわき草紙 奥様お耳をどうぞ』あまとりあ社(55)――このときのタイトルは「処女華受難」
◎「推理界」1969年7月号――このときのタイトルは「處女華受難」
◎カミ『ルーフォック・オルメスの冒険』出帆社(76)――このときのタイトルは「衣裳簞笥の秘密」
人生サーカス.jpg ふらんす粋艶集.jpg 奥様お耳をどうぞ.jpg
推理界.jpg オルメスの冒険.jpg 地獄団地のひとびと.jpg
 そもそも「うごく顔」なんて、存在すら知りませんでした。その雑誌にカミ作品のダイジェストが掲載されているなんて……。こういう僥倖は本当に嬉しいですね。さらに、この絵物語の絵を描いているのが木村しゅうじとなれば、嬉しさは倍加します。
 木村しゅうじには『地獄団地のひとびと』浪速書房(70)なるヒトコママンガ集があり、なんと星新一が解説を書いているのです!
 初古本屋でこんな発見があるとは、さい先いいような気がします。
 さて、今年はどんな本と巡り合えるでしょうか。
コメント(2) 

コメント 2

黒田

 カミ作品について調べているとき、貴サイトに辿り着きました。

 『うごく顔』は季節風書房の雑誌『100万人のよる』の姉妹誌として発行され、第3号まで確認しています(鷲尾三郎の短編も再録か不明ですが載っています)。
 同誌掲載の「人工処女膜〜」は元々は別雑誌に創作扱いの翻案が載っており、そこからのダイジェストだと思われます。
 この時代のアブノーマル系雑誌や実話雑誌は内部の人脈が繋がっている事も多く、『うごく顔』へのダイジェスト転載も内部の関係者繋がりかも知れません。
by 黒田 (2016-08-02 14:31) 

高井 信

 黒田さん、いらっしゃいませ。
 興味深い情報をありがとうございます。なかでも、
>別雑誌に創作扱いの翻案
 うへええ、って感じです。この時代、翻案やりたい放題でしたから、特に意外ということはありませんけれど。
 また何かありましたら、遊びに来てくださいね。
by 高井 信 (2016-08-02 15:42) 

コメントを書く

お名前:[必須]
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。