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「メビウス」

 昨年5月、SFファンダムの大先輩で、私が若いころにお世話になりまくった岡田正哉さんが亡くなりました。(この記事参照)
 SFファンダムではこういう場合、追悼ファンジンを出すのが慣わしになっています。
 新しいところでは、野田昌宏さんの「輝く星々のかなたへ!」(宇宙軍参謀本部/2008年9月23日発行)、柴野拓美さんの「塵もつもれば星となる 追憶の柴野拓美」(「柴野拓美さんを偲ぶ会」実行委員会/2010年9月18日発行)、嬉野泉さんの「SF同人誌 ボレアス 巻外号 嬉野泉追悼号」(SF同人誌ボレアス/2011年7月31日発行)など……。
輝く星々のかなたへ!.jpg 塵もつもれば星となる.jpg 嬉野泉追悼号.jpg
 岡田さんの追悼ファンジンを出したい! 出さなければ!
 となれば、もちろん私が! となります。で、その内容は遺稿集以外には考えられません。
 そんなわけで、早くから「岡田さんの追悼本を出すぞ」と宣言したのはいいのですが、今に至るも全くの手つかず状態です。古いファンジンの多くはガリ版刷りで、これが読みにくいこと! それに、私も人のことは言えませんが、個性的な字のファンジンが多いんですよね(苦笑)。入力の手間を考えるだけで……。
 しかし、このまま放っておくわけにはいきません。とりあえずは何を収録するか決めようと、今日は古いファンジンと格闘していました。中心となるのは、ご自身が出されていた「ベム」、創刊から中心になって活躍していた「ミュータンツ」、私も入会していた「アルデバラン」ですが、ほかのファンジンにも寄稿されています。
死妖姫.jpg そのひとつが、SF古書研究会が発行していた「メビウス」です。SFの古本情報をメインにしたファンジンで、これが古本者の心を直撃する面白さなのですが、それはともかく――
 岡田さんは第2号(1970年1月20日発行)に「名古屋古本店めぐり(初心者にもよくわかるオール図解デラックス版)」、第3号(1970年6月14日発行)に「風留本余釈 第1章 自己分析」を寄稿。前者はタイトル通りの内容で、後者はレ・ファニウ『死妖姫』新月社・英米名著叢書(1948年刊)を題材にした自己分析です。――ちょっと考えて、「風留本余釈」は収録候補としてメモしました。(『死妖姫』=『吸血鬼カーミラ』)
 第1号(1969年11月30日発行)には岡田さんの原稿は掲載されていませんが、「巻頭言」に――
>誌名は最初「書泉」の予定でしたが、神田にでっかい「書泉」という店があるのでやめて、
>「ブックエンド」にしようかと思ったんですが、しまらないので、岡田氏に無理にお願いして
>『メビウス』と命名していただきました。氏によると、「昔の本が今出てくる雑誌」という意味
>だそうです。
 このころの岡田さんのことは知らないのですが、SF古書仲間の間で人望があったことは窺えますね。心がほっこりします。
 そんなこんなで、読み耽ってしまったり、しみじみしちゃったりするものですから、作業がなかなか進みません(笑)。昔のファンジン、楽しすぎます!
メビウス1.jpg メビウス2.jpg メビウス3.jpg
コメント(2) 

コメント 2

山本孝一

おお、追悼本の企画が動き始めましたか。
私は岡田さんの文章をまとめて読んだことがないので本当に楽しみです。
しかし、まぁすごい方でしたねぇ。
コレクションも、語学力も、そしてお人柄もすばらしい人でした。
高井さんもそうでしょうが、私も岡田さんからずいぶん親切にしていただきました。
そしてインターネットもなにもない、あの昭和の時代に、英米だけでなく、
ヨーロッパの各国の古本屋と手紙のやりとりをしてコレクションを増やしていかれたのです。
いつだったか岡田さん宅を訪れたら、オランダから届いたばかりの古書をみせてくださり「古書店が請求の数字を間違えて一桁安く書いてしまったんだ。で、この本はオランダからの送料ぐらいで買えた」とニコニコしておられました。
また、1950年代のアメリカの超常現象専門誌「フェイト」を「軽く読むにはこんな雑誌がちょうどいいんだ」と何冊か頂戴したこともあります。
私などはその「フェイト」誌を辞書をひきつつ読んでもまだわからないのに、「軽く読むには」なんて岡田さんはすごい!と思ったものです。
追悼本、本当に楽しみにしてます。
by 山本孝一 (2012-02-16 20:29) 

高井 信

 はい。ようやくスタートです。
 どのような形にするか、まだ全然決めていませんが、メインとなるのは間違いなく古典SF(ベム、パルプ雑誌、秘境小説など)に関する論考でしょう。今のところ、「BEMライブラリイ」「系統宇宙生物分類学」「宇宙生物命名規約・案」「SF雑誌99の謎」「異聞外伝 SF雑誌」「大空の秘境」「影を求めて」――こういったタイトルは絶対に収録しようと考えています。半分以上は連載もので、これだけでもかなりの分量になります。
 かの名著『宇宙生物分類学』をまるまる復刻したい気持ちも……。
 何かご協力をお願いするかもしれません。そのときはよろしくお願いします。
by 高井 信 (2012-02-16 23:16) 

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