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メタファンジンへのハードル

 昔のファンジンから後世に残したい作品を発掘し、復刻する。――こういったファンジンを森下一仁さんはメタファンジンと名づけてくれました。
 私の場合、その対象は岡田正也さんです。3年前から、岡田さんが昔のファンジンに書かれたものを発掘し、復刻するという作業を続けています。先日の『こわがり屋』もその一環ですね。
 この一蓮の作業で何が一番大変かというと、テキストの入力です。若い方の多くはご存じないでしょうが、古いガリ版ファンジン(もちろん手書き)の読みにくさときたら、筆舌に尽くしがたいのです。ガリ切りの手練れが作れば話は別ですけれど、そんな人はなかなかいません。
 とにかく、ざっと読むだけでも一苦労。テキスト入力するには一字一句を判読しなければなりませんが、それも困難な箇所が多数あります。
「こわがり屋」はファンジン「ベム」創刊号(1966年)に掲載されました。はい、手書きのガリ版ファンジンです。
 こんな感じ。
サンプル.jpg
 ワープロ打っていると嫌になりますよ、ほんと。「ベム」創刊号は3年前に復刻(→この記事参照)。10人くらいの方に差し上げましたが、この翻訳をちゃんと読まれた方は1人もいないのではないでしょうか。実は私も、企画を思いついてから初めて読みました(笑)。
 今回、どうしても判読不能の箇所は森田裕さんの協力を仰ぎました。森田さんは原作の掲載誌をお持ちなのです。
「ここが読めないんですが」
「原文では××となっていますから、△△でしょう」
「あ、なるほど」
 といった具合。あるいは、私が間違って入力していた漢字を原文との照合の上、修正してもくれた箇所もあります。解説を書いていただいたこともそうですが、発刊にあたっては森田さんのお力が極めて大きかったです。
 メタファンジンの発行は1人の力では困難です。
 私、もうちょっと頑張ります。引き続き、ご協力をお願いしますね。>皆さま

【追記】
 もちろん私も昔はガリ切りしていました。→こんな感じです。

【追記2】
 森田さんから「アメリカの1930年代から40年代初めのファンジンはもっとすさまじい」と、サンプル画像を送ってくれました。
アメリカ.jpg
 うわあ。これは確かに読めない。
 で、お返しに、うちにある「読めないファンジン」の画像をお送りしました(笑)。
日本.jpg
 アメリカの勝ち、ですかね~。ちょっと悔しいけれど、読めないという意味では引き分けかも(笑)。――って、私らの遊びは変ですな(笑)。
 これらはさほど特別というわけではなく、昔は読めないファンジンがたくさんありました。いまのSFファンは幸せですね。
コメント(6) 

コメント 6

森田 裕

お疲れ様でした。

私も初め、「ベム」創刊号(の復刻版)で読んでいたのですが、途中でへこたれて英文の原作に切り替えました(笑)。割合平易な英文だったので助かりました。

お蔭で立派な本が出来ましたね。これでジェイ・ウィリアムズに興味を持った人もいるのでは?(私もその一人)

影響絶大ですね。
by 森田 裕 (2015-06-19 12:41) 

高井 信

>途中でへこたれて
 よほどのことがないと読み通せませんよね(笑)。
>お蔭で立派な本が出来ましたね。
 ええ、大満足しています。森田さんの知識と校正能力によるところ大です。本当にお世話になりました。
 
by 高井 信 (2015-06-19 14:36) 

広島保生

>一蓮の作業で何が一番大変かというと、テキストの入力

現在製作中の「我らの昨日の全て」でも、同じような苦労をしました。
しかも、〈イスカーチェリ〉連載中から、他の同人から間違いの指摘を受けたとかで(誤字脱字だけでなく、事実関係の誤認も含むようです)、
こうなると当事者ではない僕などは、お手上げです。

その辺りのミスを極力減らすべく、僕が入力した原稿を
波津さん以外の方にも読んでいただいているところです。

完成したときの達成感を夢みて、
残りの作業を頑張ります。
by 広島保生 (2015-06-19 19:23) 

高井 信

 日本SF研究会の刊行物もなかなか手強いですよね(笑)。お疲れさまです。
 でも、執筆者ご本人にチェックしていただけるのですから、その点は安心ですね。
>完成したときの達成感を夢みて、
>残りの作業を頑張ります。
 期待しております。
by 高井 信 (2015-06-19 19:39) 

山本孝一

眼が悪くなったのも理由のひとつですが、私は昔のガリ版刷りのファンジンが読めなくなりました。
ひと昔前のワープロそれから現在のパソコンで作られたファンジンに慣れた目にはもう読めません。
1960年代には紙やすり(ペーパー)の上にガリ切り用の原紙を置き、三角定規の角で切っていったというすさまじいファンジンがあったと聞いたことがあるのてすが。
私も『ベム」創刊号の復刻盤をいただきましたが、あの翻訳は読めませんでした。
しかしそんなガリ版刷りのファンジンに「こわがり屋」のような佳作がひっそりと眠っているのですね。

by 山本孝一 (2015-06-19 20:47) 

高井 信

 ガリ版ファンジンって、印刷にむらがあるし、確かに読みづらいですけれど、内容はいま読んでも面白いものが多いです。
>しかしそんなガリ版刷りのファンジンに「こわがり屋」のような佳作がひっそりと眠っているのですね。
 そういうことですね。埋もれたままにしておくのはもったいないと思います。

by 高井 信 (2015-06-19 21:48) 

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