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ショートショートリーダーズ

戦後SF事件史.jpg ちょっと前から、長山靖生『戦後SF事件史 日本的想像力の70年』河出ブックス(12)をつまみ読みしています。ほんと、適当にぱらぱらと。
 その169ページ――
>同誌〈ショートショートリーダーズ〉からも岬兄悟らがデビューしている。
 はあ? ショートショートリーダーズ? 何それ?
 で、はたと思い出したのがウィキペディアの「岬兄悟」の項です。
>『SFマガジン』で星新一が行っていたショートショートリーダーズで星新一が絶賛。
 なんて書かれています(→この記事参照)。
 これはデタラメでして、そこそこSFに詳しい人ならご存じのように、「星新一」ではなく「豊田有恒」、「ショートショートリーダーズ」ではなく「リーダーズ・ストーリイ」です。しかも岬さん、「リーダーズ・ストーリイ」の常連投稿者ではありましたが、確か、一度も入選していないのではなかったっけ。
 もしかして長山靖生はウィキペディアを参考にして、それを鵜呑みにして原稿を書いたのでしょうか。だとしたら……。
 長山靖生はちゃんとした仕事をする人と思って、評価していたんですけれどねえ。いや実際、この『戦後SF事件史』も素晴らしい仕事と思うのですが、こういうことが書かれていますと、萎えます……。

 ちなみに、豊田有恒選「リーダーズ・ストーリイ」は「SFマガジン」1977年11月号(228号)スタートです。現在の選者は星敬ですが、タイトルは今も変わらず「リーダーズ・ストーリイ」。第1回のタイトルをご覧に入れます。
SFマガジン228号.jpg   リーダーズ・ストーリイ.JPG
「ショートショートリーダーズ」って、いったい何なんでしょう? どこから出てきたんでしょう?
 ネットで流れているだけでしたら笑い飛ばせますが、長山靖生が著作に書いているとなると……溜め息しか出ません。
コメント(8) 

コメント 8

山本孝一

「リーダーズ・ストーリイ」って選者は替わったとはいえ、もう三十数年間続いているのですねぇ。
驚きました。
私はSFMは買っているものの、「リーダーズ・ストーリイ」はまったく読んだことがないのですが。
私もこの『戦後SF事件史』が面白そうなので買おうかと思っていたのですが、
この記事を読んで買う気がなくなりました。
インターネットって情報はたくさんありますが、それが正しいかどうか判断できません。
「ウィキペディアを参考にして、それを鵜呑みにして原稿を書いたの」なら
そりゃ簡単に本が書けますわなぁ。
長山靖生さんはいい仕事をされていたかもしれませんが、おかしなところで
ミソをつけられましたなぁ。
by 山本孝一 (2012-02-25 11:55) 

高井 信

 いやいや、『戦後SF事件史』自体は(まだ適当にしか読んでいませんが)面白いですよ。
「ショートショートリーダーズ」に関しては、魔が差したとしか思えません。間違いとかいうレベルの話ではないですからね。どうしちゃったんでしょう、長山さん。
by 高井 信 (2012-02-25 22:22) 

斎藤肇

以前、出版社の校閲がネット情報を鵜呑みにして間違った赤を入れられて困る、という話を聞いたことがあります。あるいは、せっかく直した原稿が編集者によって前のバージョンに戻されてしまった、なんて話も聞いたことがあります。あくまでも可能性ですが、単純に作者の責任と見ない方がいいかもしれません。
by 斎藤肇 (2012-02-25 23:43) 

高井 信

 私も資料的な原稿を書く際、編集さんから「ネットではこうなっているが」と尋ねられることがあります。私が知らないことであれば調査し、必要と思えば修正します。知っていれば、「それはデタラメです」と資料を提示し、納得してもらいます。
 この本に関しては、巻末の「主要人名索引」にも疑問符がつきます。何が主要で何が主要でないか、どういう基準で線引きをしたのか、さっぱりわからないのです。長山さんは関与していないのかも、と思いますが、長山さんの名前で出ている以上、長山さんの判断となってしまうんですよね。
 真実は……わかりません。ただ、釈然としない気持ちはあります。
by 高井 信 (2012-02-26 00:20) 

t-kita

確かに、「喜多哲士」がただ「クズSF論争」の時にSFマガジンに寄稿したメンバーの一人として文中に登場するのですが、「主要人名索引」に載るほど主要でも何でもないので、高井さんのおっしゃる通り、基準がわかりません。
個人的には索引に名前が載っただけでちょっと嬉しかったりしたのですが、それとこれとは別ですね。
by t-kita (2012-02-27 23:16) 

高井 信

 索引を眺めていると、「どうしてこの名前がある?」「どうしてこの名前がない?」に加えて、「この人、誰?」なんですよね。SF関連の本の索引を眺めて、これほど首を傾げた経験はありません。
 ちなみに、私の名前は索引になく、本文にも採り上げられていないのかと思いきや、そんなことはなくて、へ~んな気持ちです。そういえば、岬兄悟さんの名前も索引にはないですね。
 この索引、役に立つのかしらん。
by 高井 信 (2012-02-28 08:31) 

川越敏司

こんにちは、はじめまして。

今から20数年前に岬兄悟氏の『リモコン・パパ』を通じてSFショートショートを知り、岬さんみたいになりたいと夢を掻き立てられてきた者です。高井先生の『ショートショートの世界』は家の宝物として大切にしています。
ところで、わたしは、岬兄悟氏はリーダーズ・ストーリィ常連投稿者だったので、てっきり掲載があるものとずっと思いこんでいました。
それで、ブログ記事を読ませていただいて、気になって『リモコン・パパ』を探して確認すると、そこに収められた作品中、SFマガジン掲載作は昭和56年以降なので、デビュー作「頭上の脅威」(昭和54年)より後でしたね。
長年の誤解が解消されました。ありがとうございます。
それにしても、当時は掲載がない常連投稿者でもデビューできたんですねえ。そっちの方が驚きです。どういう経緯だったんでしょうね?

by 川越敏司 (2012-03-08 19:14) 

高井 信

 いらっしゃいませ、川越さん。
 拙著を大切にしていただいているとのこと、嬉しいです。
 岬さんはリーダーズ・ストーリイへの投稿がきっかけで豊田さんと面識を得たんですよね。でまあ、いろいろあって、豊田さんの推薦でデビュー、という次第です。
 今後もショートショートを愛し続けてくださいね。
by 高井 信 (2012-03-08 20:40) 

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