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『善良な男 他三篇』

 久しぶりに、古本の嬉しい収穫がありました。弾む心で記事を書きます。
 今年4月14日、この記事の【追記3】として、以下のように書きました。

「女か虎か」の邦訳ですが、「Index to Anthologies」というHPに、『探偵家庭小説篇』近代社・世界短篇小説大系(26)に「淑女か猛虎か」なるタイトルで収録されているというデータがありました(木村信兒・訳)。
 また、「改造社世界大衆文学全集目次細目」によりますと、『善良な男 他三篇』改造社・世界大衆文学全集(31)にも「淑女か猛虎か?」というタイトルで収録されているようです(木村信児・訳)。
 いつか現物を手にしたいものです。
(【註】「改造社世界大衆文学全集目次細目」へのリンクは無効になっていました)

善良な男他三篇.jpg あれから8ヶ月あまり経ち、『善良な男 他三篇』改造社・世界大衆文学全集(31)を入手しました。
 本の大部分を占めるのはポウル・デユ・コツクの長編『善良な男』ですが、巻末に他作家による3短編も収録されていて、そのうちの1編がフランク・アヤル・ストツクトン「淑女か猛虎か?」です。さっそく本文を確認。――うん、間違いなく「女か虎か」ですね。
『探偵家庭小説篇』は未入手、現物未確認ですが、おそらく同じでしょう。リドル・ストーリーの名品「女か虎か」が1926年に日本に翻訳紹介されていたとは……。

 さて。
 私が東京創元社〈世界大ロマン全集(全65巻)〉の熱烈な読者だったことは以前に書きました(→この記事)。
〈世界大ロマン全集〉の戦前版とも言えるのが、『善良な男 他三篇』の収録されている改造社〈世界大衆文学全集〉です。昭和の初期に刊行され、全80巻。こちらもまた、いい意味で「節操のない」全集でした。
 実は私、〈世界大ロマン全集〉の収集と並行して、〈世界大衆文学全集〉も集めていました。ただし、〈世界大ロマン全集〉は何とか完集したものの、〈世界大衆文学全集〉は途中で挫折。このあたりの事情は、私が編集した『《世界大ロマン全集》解説総目録』私家版(79)の「編集後記」に書きました。抜粋しますと――
編集後記.jpg
 とまあ、そういうことなんですが、25年ほど前に蔵書整理をした際、所有していた〈世界大衆文学全集〉の不要と思われる巻は手放してしまい……。
カーステンの家憲/善良な男.jpg ショートショートの研究を始めて、それを深く後悔しました。〈世界大衆文学全集〉にはショートショートの見地から重要な巻が何冊もあるんですよね。当然のことながら探求開始です。
 この全集は、文庫サイズのハードカバーで、(初期配本分を除くと)2冊がセットで共函に収められています。たとえば『善良な男 他三篇』は『カーステンの家憲』とのセットです(右の写真)。
 30~40年前――私が完集を目指していたころは、どこの古本屋の店頭にも何冊か安価で転がっていたもので、入手はさほど難しくないと思っていましたが、甘かったですねえ。
 古本屋で目にする機会は少ないし、それに、以前は完本を見るのは珍しくなかったのですけれど、現在では、見かける本の多くはカバー欠の裸本で、共函付きとなると滅多に見ないのです。売っていても、プレミアが付いていたり……。
 いやしかし、はたと気づけば、〈世界大衆文学全集〉は80年も前に発行されていたんですよね。あまり見かけないのも、美本を売っていないのも、当然と言えば当然。
 それでも、最重要と思われる巻は入手しました。ほかに参考書として手元に置いておきたい巻の多くは買いましたが、気になっていながら未入手&現物未確認の巻が何冊もあります。持っていても、カバーが欠けている本もあるし……。
 先は長いです。

 以下、蛇足ながら――
アルデバラン14号.jpg 大昔、そのころ入会していたSFファングループ〈広島SF同好会〉の会誌「Aldebaran」№14(1976年8月15日発行)に、〈世界大衆文学全集〉第1期刊行分(36冊)の紹介エッセイを書きました。読み返してみると、当時の情熱が甦ってきます。
 ああ、そうだった、そうだった。H・R・ハガード『洞窟の女王』を最初に読んだのは〈世界大衆文学全集〉版だったんだよな。
『英米新進作家集』に収録されているガイ・ブウスビイ「白妖姫」も忘れられないなあ。のちに横田順彌さんと話しているとき、この作品のことが話題になり、楽しい発見に結びついたっけ。(横田順彌『日本SFこてん古典』第51回「『魔法医者』その他のことなど」参照)
 う~~~ん、懐かしい。――あっ。1976年の夏って、浪人中ではないですか。何してたんだか(苦笑)。
 ちなみに、〈広島SF同好会〉の会長は森美樹和(大瀧啓裕)さんでした。森さんとはずいぶんご無沙汰していて、少なくとも20年以上は年賀状の付き合いだけと思います。なかなかお目にかかる機会がないですねえ。
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