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『日本SF精神史』

 珍しく、新刊を読んでから紹介します。――長山靖生『日本SF精神史 幕末・明治から戦後まで』河出ブックス(09)です。
日本SF精神史.JPG 著者は本書冒頭で「先行研究によって明らかにされた先駆的なSF作品をつなげて、歴史化するのが私の願いだ」と書いています(8ページ)。言ってしまえば、「点」を「線」にする作業です。
 本書では、1850年代から1975年ごろまでの日本SFの歴史が書かれています。100年以上の歴史をわずか200ページあまりの本で詳述するのは、はっきり言って無理です。ここまでコンパクトにまとめるには、取捨選択の作業が必要となってきます。どれだけ厖大な資料を背後に持ち、本書は書かれたのか……。想像すると、気が遠くなります。
 私は一時期、日本の古典SFにハマっていたことがありました。「SFマガジン」に連載されていた横田順彌「日本SFこてん古典」の影響です。関連記事はできる限り読むようにしていましたし、自分自身でも本を集めていました。(こちらの記事にも、ちょろっと書きました)
 私みたいな人間からすると、本書に書かれている内容の多くは、「どっかで読んだなあ」なんですが、その知識はあくまでも断片的なものです。こういう通史的な書き方で呈示されると、また新たな面が見えてきます。
懐かしい未来.jpg また書影フェチとしては、掲載されている書影を眺めているだけでも楽しめました。「SFマガジン」創刊号(1960年2月号)の書影(195ページ)には何と帯も付いていて、おおっ!
 SF初心者からマニアックなファンまで、すべてのSFファンにぜひ読んでいただきたい本です。
 長山靖生には『懐かしい未来 甦る明治・大正・昭和の未来小説』中央公論新社(01)という編著もあり、こちらは詳細な解説付きのアンソロジーです。『日本SF精神史』の姉妹本と言ってもいいかもしれませんね。併せて、お勧めしておきます。
コメント(1) 

コメント 1

高井 信

『日本SF精神史』が日本SF大賞受賞!
 嬉しいですね。
 実は、この本を読んで尋ねたいことがあって、長山さんに電話したんです。そのとき、「ほんと、面白かった。これ、SF大賞に決まりですね」と。
 長山さんは「いやいや」と言っていましたが、現実になりました。
 長山さん、おめでとうございます!
by 高井 信 (2010-12-05 22:49) 

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