SSブログ

「ショートショートランド」

『日本ショートショート出版史』では、もちろん「ショートショートランド」にも言及しています。本日、チェックをお願いしているTさんのご指摘を受け、「ショートショートランド」を精査。かなりバージョンアップさせました。
 まだ決定稿ではありませんが、ご覧に入れます。1981年の項です。
            *
 そして何より、この年最大の出来事は、ショートショート専門誌「ショートショートランド」の創刊である。第1号(1981年春号)から第22号(1985年5+6月号)まで、全22冊発行。〈星新一ショートショート・コンテスト〉の入選発表および入選者の作品発表の舞台として、大いにショートショート界を盛り上げた。もちろん既製作家のショートショートも掲載。私も2編、寄稿させていただいた。
 この雑誌の連載企画からは、何冊もの楽しい本が誕生した。まずはショートショート集だ。
〈ショートショート三題噺〉――落語の三題噺と同じく、女優が出した3つのお題から作家がショートショートを書き上げるというもの。創刊号から第22号(終刊号)まで全22回。この企画は『三角砂糖 ショートショート20人集』(講談社/1986年)として1冊にまとまっている。収録から外れた2編、17号の中井英夫「おとしあな」、21号の尾辻克彦「愛情ホテル」のうち、前者は『黄泉戸喫(よもつへぐい)』(東京創元社/1994年)に収録されている。後者は確認できていない。
ショートショートランド創刊号.jpg 三角砂糖.jpg 黄泉戸喫.jpg
 赤川次郎と橫田順彌による〈対決シリーズ〉は、与えられたテーマに沿って、両作家がショートショートを競作するというもの。第2号から第16号まで全15回。この企画も『二人だけの競奏曲』(講談社/1984年)という本になった。
 第17号から小池真理子と笠井潔による〈新・対決シリーズ〉がスタートし、第21号まで全5回。こちらは単行本化されていないが、作品自体はそれぞれの作品集――小池真理子の作品は『キスより優しい殺人』(勁文社/1989年)に、笠井潔の作品は『エディプスの市(まち)』(講談社/1987年)に収録されている。
 第22号(終刊号)では〈対決シリーズ〉が一度限りの復活。橫田順彌、赤川次郎、小池真理子、笠井潔による競作という豪華版だ。
二人だけの競奏曲.jpg キスより優しい殺人.jpg エディプスの市.jpg
 石川喬司と都筑道夫による〈落ちコンテスト〉も楽しい企画だった。両作家が交互に結末を伏せたショートショートを発表し、読者からオチを募集するというもの。第6号から第20号まで全13回(第9号、第15号は休載)。石川喬司が7回、都筑道夫が6回を担当した。残念ながら単行本にはまとまっていないが、ショートショートそのものは各作家の作品集――石川喬司の作品は『絵のない絵葉書』(毎日新聞社/1986年)に、都筑道夫の作品は『蓋のとれたビックリ箱』(光風社出版/1983年)と『証拠写真が三十四枚』(光文社文庫/1987年)に収録されている。
絵のない絵葉書.jpg 蓋のとれたビックリ箱.jpg 証拠写真が三十四枚.jpg
 エッセイも充実していて、ことに各務三郎「ショートロジー講座」はショートショートの名エッセイだった。創刊号から第14号まで全13回(第13号は休載)。これは単行本に収録されておらず(と思う)、残念でたまらない。
 ショートショート周辺の連載企画から生まれた本も紹介しておこう。
 岡嶋二人の〈あなたに挑戦〉は推理クイズで、第8号から第22号(終刊号)まで全15回。「パズラー」誌に発表した作品も併せて『ちょっと探偵してみませんか』(講談社/1985年)として出版された。〈ひとコマランド〉は読者のヒトコママンガ投稿企画だ(和田誠・選)。創刊号に募集要綱が発表され、第2号から第22号(終刊号)まで続いた(全21回)。和田誠・編『ひとコマランド傑作選』(講談社/1986年)として刊行。別役実〈名画劇場〉は『名画劇場 別役実のパロディ・シアター』(王国社/1985年)となった。これは戯曲形式によるショートショートと言ってもいいかもしれない。創刊号から第18号まで全18回。
ちょっと探偵してみませんか.jpg ひとコマランド傑作選.jpg 名画劇場.jpg
「ショートショートランド」――日本ショートショート史上に燦然と輝く雑誌であることは間違いない。
            *
 以上。
 書誌データは基本的に初刊本のみです(再刊情報も加えると煩雑になるため)。
 う~~む、どんどんよくなっていくなあ(嬉)。
コメント(4) 

コメント 4

橋本喬木

すっごく懐かしいです。
当然、第1号から全部買って読みました。
大切なモノだったので、ずっと保存してたんですが・・・
10年少し前、結婚した時に持っていた本を大量処分しちゃったんですよ。家が狭かったもので・・・
悲しいかな、その中に含まれてしました。



ああああああ、もったいない事をした。

by 橋本喬木 (2015-03-07 07:26) 

高井 信

 橋本さんの年齢ですと、ちょうど大学生のころでしょうか。どんぴしゃの年代ですね。
 ショートショートの歴史を振り返ってみて、80年代前半というのは、まさにショートショートの全盛期だったと思いました。ほんと、いい時代でした。
by 高井 信 (2015-03-07 09:13) 

斎藤肇

『ショートショートランド』は、我が家のゴミの山の向こうに積まれているはずです。たぶん50冊くらい。うち22冊は私が買ったものですが、残りは編集部が解散になった時に処分するぶんをもらい受けたのです。そういう事情なので、たぶんコンプリートは1セットか2セットというところ。中途半端ですけどねえ、捨てられないんです。
by 斎藤肇 (2015-03-07 16:36) 

高井 信

 コンテスト出身者にとっては忘れられない雑誌でしょうね。
>捨てられないんです。
 よくわかります。私にとっての「ネオ・ヌル」みたいなものかな。商業誌デビューの「奇想天外」よりも「ネオ・ヌル」のほうに思い入れが強い。
 書いた作品、片端から忘れていますが、「ネオ・ヌル」に掲載していただいた2編は絶対に忘れません。眉村さん、筒井さんの寸評とともに。(寸評に関して言うなら、没になった作品のものも覚えています)
by 高井 信 (2015-03-07 18:36) 

コメントを書く

お名前:[必須]
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。