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ベッケルの短編集

 ゆえあって、今日はグスターボ・アドルフォ・ベッケルを採り上げます。――19世紀半ばにスペインで活躍した詩人・小説家です。特に詩人としての評価は極めて高いようですが、拙ブログで採り上げるのは、もちろん小説家としてのベッケルです。
 ベッケルの小説は(おもに)スペインの伝説に材をとった、いわゆる再話です。ジャンル分けするならば幻想小説と言えるでしょうか。ショートショートとしては少々長めですし、内容的にもショートショートっぽさは薄いですけれど、1860年代前半という執筆年代を考えると、ショートショートのルーツのひとつとは言えるかもしれませんね。
 1836年生まれ、1870年歿。若くして他界したこともあり、ベッケルが遺した小説は20編にも満たないようです。日本では以下の短編集が発行されていますが、当然のことながら、収録されている作品の多くは重複しています。今回は、そのあたりを詳述することにします。

『ものがたり』世界文學社・世界文學叢書(48)
 12編+「原作者はしがき」を収録。
『スペイン伝奇作品集』創土社(77)
 16編+「はじめに」を収録。世界文學社『ものがたり』の作品はすべて収録されています。
『緑の瞳・月影 他十二篇』岩波文庫(79)
 世界文學社『ものがたり』に「口づけ」を加えて、改題・文庫化したものです。13編+「交響楽的序文」を収録。
 創土社『スペイン伝奇作品集』には「口づけ」も収録されています(タイトルは「くちづけ」)から、創土社版を持っていれば、世界文學社版も岩波文庫版も不要ですね。ちなみに、「原作者はしがき」「はじめに」「交響楽的序文」は同一です。
『スペイン伝説集』彩流社(02)
 14編収録。うち2編――「神を信ぜよ」と「悪魔の十字架」は創土社『スペイン伝奇作品集』に収録されていません。岩波文庫『緑の瞳・月影 他十二篇』との重複は9編です。
ものがたり.jpg スペイン伝奇作品集.jpg 緑の瞳・月影.jpg スペイン伝説集.jpg
 作品集としては、ほかに『赤い手の王』彩流社(95)もあります。収録されているのは「赤い手の王」と「緑の眼」の2編。この本は現物未確認なんですが、「赤い手の王」は長い作品らしく、ショートショート研究の対象外ではないかと……。もちろん、機会があれば現物をチェックしたいとは思っています。
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