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『ショートショート・マルシェ』

 田丸雅智くんが新著『ショートショート・マルシェ』光文社文庫(15)を送ってくれました。いつもありがとうございます。全18編。今回は「食」をテーマにしたショートショート集とのこと。
「食」テーマのショートショートといえば、すぐに思い出すのは眉村卓『発想力獲得食』三一書房(95)/双葉文庫(14)です。長らく入手困難でしたが、幸いなことに昨年、双葉文庫で復刊されました。新旧の作品を読み比べてみるのも面白いかも。
ショートショート・マルシェ.jpg 発想力獲得食.jpg 発想力獲得食(文庫).jpg
 さて。
 本書は昨年の『夢巻』『海色の壜』、今年の『珍種ハンター ウネリン先生』『家族スクランブル』に続く、田丸雅智5冊目の著作です。もちろんすべてがショートショート集で、いやあ、この発刊ペースは驚異的ですね。すごい!
 最初のショートショート集から、こんなペースでショートショート集を上梓した作家って、いるのかしらん。
 かの星新一さんでも、最初の2年では――
『人造美人』新潮社/1961年2月刊
『ようこそ地球さん』新潮社/1961年8月刊
『悪魔のいる天国』中央公論社/1961年12月刊
『ボンボンと悪夢』新潮社/1962年7月刊
 と、4冊だけ。いやいや、4冊でも充分に多いんですけどね。
 あ、でも、田丸くんのショートショート集は1冊の作品数が少ないな。作品数は星さんのほうが多そうな気がする。
 数えてみました。
『夢巻』20編、『海色の壜』20編、『珍種ハンター ウネリン先生』10編、『家族スクランブル』18編、『ショートショート・マルシェ』18編。計86編。
『人造美人』30編、『ようこそ地球さん』28編、『悪魔のいる天国』36編、『ボンボンと悪夢』36編。計130編。
 やはり星さんのほうが多かったです。1冊あたりに換算すると、32.5編と17.2編。2倍近い数が収録されているのですね。
 ちなみに、都筑道夫さんは最初のショートショート集『いじわるな花束』七曜社(1962年)から2冊目への間隔があいてしまったのですが、1972年の2冊目『夢幻地獄四十八景』講談社(60編)から翌73年の『悪夢図鑑』桃源社(113編)、『悪意辞典』桃源社(92編)、『悪業年鑑』桃源社(116編)――この4冊で計381編という、とんでもない数字をたたき出しています。もはや呆れるしかありませんね(笑)。
 田丸くんのショートショートって、おおむね長めで、短編小説的な味わいが強いものが多いです。それも魅力でしょうが、やはりショートショートの最大の魅力は短さです。ショートショートのスタンダードは10枚前後で、15枚を超えるとかなり長いと感じます。また、3枚とか5枚の、「アイデアだけだぜ。どうだ、参ったか」的なショートショートも魅力的。そういった作品も読んでみたいなと思います。
 比較の対象が星さんや都筑さんだなんて、すごいことなんですよ。だからこそ!

【追記】
「解説(大森望)」を読んで、気になることが2点ありました。
1)247ページにショートショートを量産している作家として、多くの名前が挙げられています。星新一、都筑道夫、山川方夫、眉村卓、阿刀田高、小松左京、筒井康隆、岬兄悟、中原涼、高井信、太田忠司、井上雅彦、藤井青銅、江坂遊。
 私の名前もあり、それは嬉しいのですが、SF第二世代の名前(橫田順彌とかかんべむさしとか)がすっこーんと抜けているのは解せません。あと、豊田有恒は必須でしょう。誰を挙げようと書き手の自由とは思いますけれど、これらの方々は明らかに私よりも優先させるべきと思います。
2)248ページに「江坂遊は―中略―「花火」で星新一ショートショート・コンクール(のちの星新一ショートショート・コンテスト)」と書かれていますが、これは事実と異なります。わざわざ「のちの」なんて註釈をつけるくらいなら、正確にお願いしたいものです。詳しくはこの記事を。江坂遊の「花火」は第2回の最優秀作。
 細かすぎますか。でも、こういうのが気になるのです。
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