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『魔術師たちと蠱惑のテーブル』

 星新一公式サイト「寄せ書き」を楽しみにしています。最も新しい寄稿者はボナ植木(マジシャン・ナポレオンズ)で、そのタイトルは「あせることなく着実にご勉強なさることを期待します」です。
 ナポレオンズはよく知っていますが、そのひとりが星新一の大ファンだったなんて……。嬉しいですねえ。
> ショートショートの三条件(私が知ったのは石川喬司さんの文章からですが)新鮮な
>アイデア、完全なプロット、意外な結末――その三原則はなんとマジックを演技するのに
>必要なものとまったく同じだとのちに認識したのです。
 おお、なるほど~。見事に納得しました。マジックを知らない私でも、まさにその通りだと感じます。
 さらに――
> 宣伝になりますが、この歳になって人生初めての小説を出版することができました。
>『魔術師たちと蠱惑のテーブル』(武田ランダムハウスジャパン)という本です。―中略―
> その本はマジックがテーマのショートショートです。
 うっひゃあ。知らなんだ~。
 これは読まなければ! ということで、さっそく買いました。
 ボナ植木『魔術師たちと蠱惑のテーブル』武田ランダムハウスジャパン(12)
 ぱっと本を開くと、すぐに目に飛び込んでくるのは「ショートショートという無限の宇宙を創った尊敬する故・星新一さんに捧ぐ」という謝辞です。――おおおっ。
魔術師たちと蠱惑のテーブル.jpg ゆるやかなつながりのある連作短編集。各編はショートショートというには長いですね。
 しみじみ&ほのぼの系あり、トリッキーな話あり。小説的な技巧や文章力に関して、ちょっと気になりますけれど、アマチュアとしては充分に合格でしょう。そんな細かいことよりも内容ですよね。魅力的なストーリーで、楽しく読ませていただきました。
 マイベストは「あなたはしっかり私のもの?」でしょうか。途中からぐんぐん物語に引き込まれました。リドルストーリーっぽく進み、そして最後は……。いやあ、こういう話は好きですねえ。この作品が読めただけでも満足です。

【追記】
「寄せ書き」を読み直し、ふと気づきました。
>小学生の頃から星さんのショートショートを読み、時には自分でも星さんの見よう見まねで
>ショートショートもどきを書き、小4の時には学校文集に載ったこともあります。
 ボナ植木は1952年生まれです。ということは小学校4年のときは1962年。――星新一の児童書はまだ1冊も発行されていません(『黒い光』『気まぐれロボット』は1966年、『宇宙の声』は1969年の発行)。そもそも星新一の著作自体が『生命のふしぎ』『人造美人』『ようこそ地球さん』『悪魔のいる天国』『ボンボンと悪夢』の5冊だけ。
 つまりボナ植木は、小学4年(あるいは、それ以前)にして、こういった本を読んでいたのですね。星新一の作品は小学生にも楽しめますが、あの時代に星新一を手にしたことがすごい。――そう思います。
 ほんと、筋金入りの星ファンですね。脱帽。
コメント(7) 

コメント 7

ボナ植木

はじめまして。星マリナさんからこのブログのことを知りました。初の小説を読んでいただきうれしいかぎりです。感謝します。ところでこのブログを私のHPで紹介しもてよろしいでしょうか?これからもチャンスがあれば書いていきたいと思いますのでよろしくお願いします。突然のかきこみで失礼しました。
by ボナ植木 (2012-11-26 09:49) 

高井 信

 うわっ! ご本人から!
 ナポレオンズ、むか~しから存じております! 好きです!
 と思わず「!」を連発しちゃうくらい嬉しいです。

 ようこそ、ボナ植木さん。
 記事にも書きましたように、星さんのファン(しかも、あんな昔からの大ファン)とは知りませんでしたので、嬉しいやら驚くやら。
 小説も本当に楽しく読ませていただきました。新作が出たら、必ず読ませていただきますね。
 拙ブログの紹介はご自由にどうぞ。というか、ご紹介いただければ嬉しいです。
 いやあ、なんだか朝っぱらから興奮しちゃってます。
 これからも楽しいマジックを、そして小説を。
by 高井 信 (2012-11-26 10:21) 

ボナ植木

こちらこそありがとうございます!!
by ボナ植木 (2012-11-26 10:31) 

山本孝一

私も昨日、本屋に『魔術師たちと蠱惑のテーブル』を注文しました。
マジシャンの視点からのショートショートとは楽しみです。
私もナポレオンズ、大好き。
マジックは一流で、そのうえショートショート集の出版とは、これがほんとうの「向かうところ手品師(©高田文夫)」ですね。
by 山本孝一 (2012-11-27 07:47) 

高井 信

 山本さんも楽しめると思いますよ。
 マイベスト「あなたはしっかり私のもの?」ではエリン「決断の時」やマティスン「箱の中にあったのは?」が(一瞬ですが)脳裡をよぎりました。
>「向かうところ手品師(©高田文夫)」ですね。
 あはははは。
by 高井 信 (2012-11-27 09:37) 

山本孝一

『魔術師たちと蠱惑のテーブル』を読みました。
いやぁ、面白いでした。
私は短編集やショートショート集を読むときは目次をみて短いものから読んでいく癖があるのですが、この本はプロローグとエピローグがありましたので順番に読んでいきました。
読み終えて、この短編小説そのものが物語の登場人物によって書かれた物語かもしれないという二重構造になっていて感心しました。
印象に残っている話は読み終えてほろ苦さがのこる「あなたはしっかり私のもの」と「私は不器用なマジシャンだった」です。
マジックを通して人生の断片を垣間見せてくれる…いいですねぇ。
数年前に食べ物をテーマにした、しま一奇さんの「恋愛グルメ小説館」というめちゃくちゃ面白い短編集を読んだことがあるのですが、やはりその分野の方が書かれた小説(しまさんは元・食品会社勤務)というのは着想からして違うようです。
『魔術師たちと蠱惑のテーブル』の各作品の冒頭に、推奨BGMが載せてありますが、今度はぜひ
推奨BGM My Favorite Things 私のお気に入り by ジュリー・アンドリュース という作品をぜひ読みたいものです。
by 山本孝一 (2012-12-14 21:00) 

高井 信

 おお、読まれましたか。
 プロのマジシャンが書いたマジック小説、やっぱりすごいですよね。次作に期待しましょう。
by 高井 信 (2012-12-14 21:29) 

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