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『小説哲学辞典』

「毎日新聞」 昭和51年4月19日(夕刊)のコラムです。

    現代版「悪魔の辞典」谷沢永一
 芥川龍之介が深く傾倒したアメリカの短編作家アンブローズ・ビアスは、人間性と現代文明を短剣一閃、辛らつに風刺する「悪魔の辞典」を残した。
 ―中略―
 現代の日本こそビアスの出現が必要と信じた版画家の木村晃郎が、四十六年から五年間に書きためた現代版「悪魔の辞典」八百五十七項目を『小説哲学辞典』全二巻に整理し、五百部でこのほど自費出版した。
 ―後略―

 こんなコラムを読んだら、気になりませんか? 少なくとも、私は非常に気になりました。前回の記事にも書きましたが、私はビアス『悪魔の辞典』が大好きなのです。
 自費出版ということですから、書店で買うわけにはいきません。さっそく毎日新聞社に著者の連絡先を尋ねました。今は個人情報保護法なんてものがありますので、そう簡単には教えてもらえませんが、当時はそういう意識は皆無でした。
 著者に連絡し、無事に『小説哲学辞典』『小説哲学辞典 日本編』私家版(75)を入手することができたのです。
 手間をかけて入手した甲斐がありましたね。ほんと、楽しく読んだことを思い出します。
小説哲学辞典.jpg 小説哲学辞典・日本編.jpg 獣神の辞典.jpg 続・獣神の辞典.jpg
 時は流れて……。
 ショートショートの資料を集めるために、10年ほど前から古本屋を回り始めたことは、もう何度も書いています。
 そんなある日、古本屋で木村晃郎『獣神の辞典』葦書房(78)という本を見かけ、手に取りました。
 あら、『小説哲学辞典』の改訂増補版ですか。「原本404項目が、600項目に増加」とあります。
 こんな本が出ていたなんて知りませんでした。値段は極めて安く、もちろん購入です。
『続・獣神の辞典』も出ていると知りましたが、縁がないままに何年も経過。正直なところ、ほとんど忘れていました。
 しかしまあ、タイミングというのは面白いですねえ。『悪魔の辞典』に想いを巡らせていて、ふと『続・獣神の辞典』のことを思い出し、何となくネット古書店検索をしてみたら――
 おや、リーズナブルな値段で売っているではありませんか。
 迷わず注文。本日、『続・獣神の辞典』葦書房(78)が届きました。
 こちらは『小説哲学辞典 日本編』の改訂増補版で、原本の453項目が550項目に増加とのことです。2冊合わせて1150項目。原本は857項目ですから、293項目増加したことになります。
 いやあ、嬉しいですね。興味のある人は少ないだろうなと思いつつも、嬉しさのあまり記事に書いてしまいました。
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