『宇宙生物分類学』
一昨日の記事「ホシヅルの羽」への山本孝一さんのコメントに、「宇宙生物にくわしい岡田正哉さん」とあります。
はてな? と首を傾げられた方も多いのではないでしょうか。
ということで、今日は岡田さんの著書『宇宙生物分類学』ミュータンツクラブ・MUTATION BOOKS(65)を紹介しましょう。
SFファンクラブの出版物(いわゆるファンジン)なんですけれど、これがまた何と言えばいいのか……。SFに登場する宇宙生物(BEM)を詳細に分類・解説した労作です。45年も前の発行ですから、驚くしかありません。
この手の本ですと、草下英明『SF宇宙生物学講座』ハヤカワ・ライブラリ(66)という名著があります。「あとがき」には――
>この本は、宇宙生物に関する、日本で最初にして(まさか最後じゃ
>あるまいが)唯一の、単行本である。
と書かれていて、まあ、『宇宙生物分類学』はファンジンですから、「あとがき」が間違っているとは言いませんが、『SF宇宙生物学講座』の1年前に岡田さんはこんな本を著しちゃってるんです。
「宇宙生物にくわしい岡田正哉さん」――納得していただけたと思います。
岡田さんの古典SF(内外問わず)に関する知識と蔵書には、すさまじいものがあります。確か、横田順彌さんが『日本SFこてん古典』を連載されているとき、ちょくちょく資料や情報の提供をされていたと記憶しています。
ご自身でも、「ベム」というファンジンを出されていました。11号まで出ていますが、うちにあるのは4冊だけです。
・6号(1968.7.10発行)
E・E・スミス〈スカイラーク・シリーズ〉の用語索引。航宙図なども掲載されています。これに触発されて、私はE・R・バローズの〈ペルシダー・シリーズ〉や〈ムーン・シリーズ〉の用語事典を作りました。前者は高校時代、後者は大学時代です。
・9号(1972.1.1発行)
小田根章「O.A.クラインと「月世界一周レース」」、大滝啓裕「米利堅漫画招待席―剣と魔法の世界へようこそ―」、岡田正也「大空の秘境」。――どれも本格的な評論です。(岡田さんは、SFファン活動のときは“正也”を使われていました。『宇宙生物分類学』も“岡田正也”名義です)
・10号(1973.12.31発行)
アメリカのSF雑誌「AIR WONDER STORIES」のインデックス。全号の表紙画像を掲載し、イラストも満載です。思い返せば、私が初めて岡田さんにお会いしたのは、この本が刊行される少し前でした。ちょうど編集の真っ最中で、「こんなのを出すんだよ」と話されていたのを思い出します。私、高校1年生。
・11号(1974.7.7発行)
大正時代に邦訳されたE・R・バローズ『火星の神神』(途中から『火星の王子』とタイトル変更。創元推理文庫版では『火星の女神イサス』)の特集号で、これまた書影満載です。このころは岡田さんの家にしょっちゅう遊びに行っていて、珍しい本を見せていただいていました。
そんな岡田さんですが、実は本職は昆虫の研究家なんです。草下英明『SF宇宙生物学講座』が読み物に力点を置いているのに対して、『宇宙生物分類学』は学術書を模しています。昆虫に関する該博な知識が『宇宙生物分類学』に生きているんですね。
本職関係では、以下のような著作もあります。こちらは商業出版です(“岡田正哉”名義)。
『ナナフシのすべて』トンボ出版(99)
『フィールド版 昆虫ハンター カマキリのすべて』トンボ出版(08)
はてな? と首を傾げられた方も多いのではないでしょうか。
ということで、今日は岡田さんの著書『宇宙生物分類学』ミュータンツクラブ・MUTATION BOOKS(65)を紹介しましょう。
SFファンクラブの出版物(いわゆるファンジン)なんですけれど、これがまた何と言えばいいのか……。SFに登場する宇宙生物(BEM)を詳細に分類・解説した労作です。45年も前の発行ですから、驚くしかありません。
この手の本ですと、草下英明『SF宇宙生物学講座』ハヤカワ・ライブラリ(66)という名著があります。「あとがき」には――
>この本は、宇宙生物に関する、日本で最初にして(まさか最後じゃ
>あるまいが)唯一の、単行本である。
と書かれていて、まあ、『宇宙生物分類学』はファンジンですから、「あとがき」が間違っているとは言いませんが、『SF宇宙生物学講座』の1年前に岡田さんはこんな本を著しちゃってるんです。
「宇宙生物にくわしい岡田正哉さん」――納得していただけたと思います。
岡田さんの古典SF(内外問わず)に関する知識と蔵書には、すさまじいものがあります。確か、横田順彌さんが『日本SFこてん古典』を連載されているとき、ちょくちょく資料や情報の提供をされていたと記憶しています。
ご自身でも、「ベム」というファンジンを出されていました。11号まで出ていますが、うちにあるのは4冊だけです。
・6号(1968.7.10発行)
E・E・スミス〈スカイラーク・シリーズ〉の用語索引。航宙図なども掲載されています。これに触発されて、私はE・R・バローズの〈ペルシダー・シリーズ〉や〈ムーン・シリーズ〉の用語事典を作りました。前者は高校時代、後者は大学時代です。
・9号(1972.1.1発行)
小田根章「O.A.クラインと「月世界一周レース」」、大滝啓裕「米利堅漫画招待席―剣と魔法の世界へようこそ―」、岡田正也「大空の秘境」。――どれも本格的な評論です。(岡田さんは、SFファン活動のときは“正也”を使われていました。『宇宙生物分類学』も“岡田正也”名義です)
・10号(1973.12.31発行)
アメリカのSF雑誌「AIR WONDER STORIES」のインデックス。全号の表紙画像を掲載し、イラストも満載です。思い返せば、私が初めて岡田さんにお会いしたのは、この本が刊行される少し前でした。ちょうど編集の真っ最中で、「こんなのを出すんだよ」と話されていたのを思い出します。私、高校1年生。
・11号(1974.7.7発行)
大正時代に邦訳されたE・R・バローズ『火星の神神』(途中から『火星の王子』とタイトル変更。創元推理文庫版では『火星の女神イサス』)の特集号で、これまた書影満載です。このころは岡田さんの家にしょっちゅう遊びに行っていて、珍しい本を見せていただいていました。
そんな岡田さんですが、実は本職は昆虫の研究家なんです。草下英明『SF宇宙生物学講座』が読み物に力点を置いているのに対して、『宇宙生物分類学』は学術書を模しています。昆虫に関する該博な知識が『宇宙生物分類学』に生きているんですね。
本職関係では、以下のような著作もあります。こちらは商業出版です(“岡田正哉”名義)。
『ナナフシのすべて』トンボ出版(99)
『フィールド版 昆虫ハンター カマキリのすべて』トンボ出版(08)
2010-05-03 08:14
コメント(4)
岡田正哉さん!
「ベム」!
嬉しいなあ、楽しいなあ。
「ベム」はファンダム史上に残る名ファンジンだとぼくは思っています。いまでも、ときどき取りだして眺めてみたりしています。
岡田さんのコレクションについては、ことパルプマガジンに関しては、野田さんの蔵書を上まわる充実度だと、岡田さんと親交のあるSF研究家の高橋良平さんもおっしゃっていました。
高橋さんが「スターログ」編集をしていたころは、岡田さんのコレクションに頼り、ロストレース小説がらみの企画を立てたこともあるとのこと。残念ながら実現には至らなかったのですが。
by 牧眞司 (2010-05-03 09:04)
昔、岡田さんの書庫を見せてもらいに行ったとき、「200年ほど前に
ヨーロッパで出版された本に、ツチノコそっくりの生物が紹介されているんだ」
とおそろしく古い本を見せていただいたことがあります。
ああ、岡田さんの興味はそこまでいっているのかと感心しました。
2年ほど前に岡田さんから「カマキリのすべて」(トンボ出版)という著書をいただきました。
これはカマキリの生態について書かれたごくまじめな本ですが、
SF生物学について書いてほしいなぁと思う今日この頃です。
by 山本孝一 (2010-05-03 11:03)
おっ、食いつきましたね。>牧くん(笑)
>ことパルプマガジンに関しては、野田さんの蔵書を上まわる充実度
両者の蔵書を比較したことがありませんので、よくはわかりませんが、岡田さんの蔵書は非常にきれいに整理されていました。話題に応じて、すぐに現物が出てくるんですよ。香山滋コレクションもすごかったですね。
現在はダンボール詰めになっているとのことで、残念です。
山本さん。
またまたコメントをありがとうございます。
牧くんもそうですが、岡田さんのすごさを分かち合えるのは嬉しいですね。
>SF生物学について書いてほしいなぁと思う今日この頃です。
同感!
by 高井 信 (2010-05-03 11:24)
山本さんからメールが届きました。
以下のコメント、投稿しようとしてもブログに反映されないとのこと。
代理アップさせていただきます。
>岡田さんのE・E・スミス〈スカイラーク・シリーズ〉の用語索引も
>労作ですね。
>とりわけ航宙図は、外国の関連研究書にも載っていないのでは。
>私はこの本を、スミスやハミルトンとならぶスペースオペラの雄、
>ジャック・ウィリアムスンさんに送ったところ、私よりこの本がふさわしい
>人がいると、なんと故E・E・スミスさんの娘さんに渡してもらえました。
>岡田さんも苦労して作った甲斐があったと思います。
うへっ。貴重な裏話ですね。
それにしても、なんという人間関係ですか。>山本さん
by 高井 信 (2010-05-03 11:56)