横田順彌のショートショート集
ほんと、連載する気は全くないのですが……。
まずはショートショートとジョークについて書きます。横田順彌の連作ショートショート『宇宙船〔スロッピイ〕号の冒険』シリーズのことを思い出してしまいまして……。このシリーズの謳い文句は“大河ショート・ショート変格ソフト宇宙SF”。――わけわかんないですね(笑)。
『宇宙船[スロッピイ]号の冒険』徳間書店(89)/『さらば地球よ! 宇宙船[スロッピイ]号の冒険』徳間文庫(92)
『はるかなる旅路 宇宙船スロッピイ号の冒険』大陸ネオファンタジー文庫(92)

1冊目には38作、2冊目には30作収録。全200作の連作にする予定でスタートし、この68作以降も何作かは(『はるかなる旅路』の「あとがき」によれば少なくとも4作は)書かれたようですが、残念ながら単行本としては出版されていません。
それはともかく……。このシリーズは作者の執筆姿勢が興味深いんですね。
『宇宙船[スロッピイ]号の冒険』の「あとがき」から引用します。
* * *
(前略)そのアイディアに、古今東西のジョークやコントで、使えるものがあれば、それをアレンジして使用する。むろん、この作戦はアイディア不足を助けるものではある。しかし、それ以上に理由がある。それは、せっかく、おもしろいジョークやコントを、ただ、読み捨ててしまうのは惜しいから、なんらかの形で残してやれないだろうかということだ。
民話やおとぎ話の世界には、採話というスタイルがある。各地に残る昔話などを作者がアレンジして、一篇の作品にするやりかただ。筆者と芥川龍之介をいっしょにするのはおこがましいが、芥川だって、日本の説話文学のアレンジをやって、傑作を書いている。
ならば、ジョークやコントをアレンジして(実際にやってみると、使えるアイディアは、非常に少なかったが)、小説として残しても、褒められこそすれ、文句はいわれまい(まあ、いう人もいるだろうが)。そう思った。
* * *
私がジョークのショートショート化を試みたのは昨日アップした「占い」1編だけですが、横田順彌は20年も前に同じ試みをしていたんですね。これを忘れて記事を書いたのは失敗でした。
と、昨日の記事への補足が終わったところで本題――横田順彌のショートショート集(および、ショートショートの見地から重要と思われる作品集)のリストを掲載します。
横田順彌は、いわゆるSF第2世代の作家のなかで一番のショートショートの書き手でしょう。作品数はもちろんのこと、内容も抜群に面白いです。
『宇宙ゴミ大戦争』ハヤカワ文庫JA(77)
処女作品集。ショートショート集ではありませんが、巻末の「〔H2CO3〕」には稲垣足穂風の掌編21編を収録。
『宇宙のファイアマン』集英社文庫コバルトシリーズ(78)
これまたショートショート集ではありませんが、巻末の「ショート・ショート・カーニバル」にはショートショート14編を収録。
『銀河パトロール報告』双葉社(79)/集英社文庫(81)
またまたショートショート集ではありませんが、巻末の「金大事包助作品集」にショートショート5編を収録。うち1編「麻雀西遊記」は長いですけれども、ショートショートの連作と言えるような作品。これは大傑作です。

『反世界へ行った男』徳間書店(81)/『ヨコジュンのショート博覧会』徳間文庫(87)
『二人だけの競奏曲』講談社(84)/講談社文庫(87)*赤川次郎との共著。

『悲しきカンガルー』新潮文庫(86)
『犯人はダ・レ・ジ・ャ事件簿』大陸ノベルス(87)
推理クイズ集ですが、これは(横田順彌の)ショートショート以外の何物でもないと思います。
『奇想展覧会』双葉ノベルス(88)/双葉文庫(90)

『とっぴトッピング』アルゴ文庫(88)
『宇宙船[スロッピイ]号の冒険』徳間書店(89)/『さらば地球よ! 宇宙船[スロッピイ]号の冒険』徳間文庫(92)
『ヨコジュンの大推理狂時代』ペップ出版(90)
これも推理クイズ集ですが、『犯人はダ・レ・ジ・ャ事件簿』同様、ショートショートと見ていいと思います。
『はるかなる旅路 宇宙船スロッピイ号の冒険』大陸ネオファンタジー文庫(92)

以上ですが、もう少し……。
『む 横田順彌の無比な無遊の物語』徳間書店(83)/『13の超小説』徳間文庫(89)
ショートショート集ではなく短編集ですが、これはぜひ読んでいただきたいと思います。何しろ帯に“著者絶賛!”。それが納得できる傑作集です。
横田作品の傑作集と言えば、永井豪選『原色馬鹿図鑑 横田順彌ハチャハチャSF傑作集』有楽出版社(82)があり、こちらも傑作揃いですけれども、残念なことに入手困難と思われます。ここ10年ほど古本屋を回りまくっていますが、1度も見たことがないですから。(ちなみに、『原色馬鹿図鑑』は「まるだしマッドずかん」と読みます。すごいタイトルですね)
その点、『む』(あるいはその文庫版である『13の超小説』)は入手が比較的容易です。まだ読まれていない方は、ぜひ!
まずはショートショートとジョークについて書きます。横田順彌の連作ショートショート『宇宙船〔スロッピイ〕号の冒険』シリーズのことを思い出してしまいまして……。このシリーズの謳い文句は“大河ショート・ショート変格ソフト宇宙SF”。――わけわかんないですね(笑)。
『宇宙船[スロッピイ]号の冒険』徳間書店(89)/『さらば地球よ! 宇宙船[スロッピイ]号の冒険』徳間文庫(92)
『はるかなる旅路 宇宙船スロッピイ号の冒険』大陸ネオファンタジー文庫(92)
1冊目には38作、2冊目には30作収録。全200作の連作にする予定でスタートし、この68作以降も何作かは(『はるかなる旅路』の「あとがき」によれば少なくとも4作は)書かれたようですが、残念ながら単行本としては出版されていません。
それはともかく……。このシリーズは作者の執筆姿勢が興味深いんですね。
『宇宙船[スロッピイ]号の冒険』の「あとがき」から引用します。
* * *
(前略)そのアイディアに、古今東西のジョークやコントで、使えるものがあれば、それをアレンジして使用する。むろん、この作戦はアイディア不足を助けるものではある。しかし、それ以上に理由がある。それは、せっかく、おもしろいジョークやコントを、ただ、読み捨ててしまうのは惜しいから、なんらかの形で残してやれないだろうかということだ。
民話やおとぎ話の世界には、採話というスタイルがある。各地に残る昔話などを作者がアレンジして、一篇の作品にするやりかただ。筆者と芥川龍之介をいっしょにするのはおこがましいが、芥川だって、日本の説話文学のアレンジをやって、傑作を書いている。
ならば、ジョークやコントをアレンジして(実際にやってみると、使えるアイディアは、非常に少なかったが)、小説として残しても、褒められこそすれ、文句はいわれまい(まあ、いう人もいるだろうが)。そう思った。
* * *
私がジョークのショートショート化を試みたのは昨日アップした「占い」1編だけですが、横田順彌は20年も前に同じ試みをしていたんですね。これを忘れて記事を書いたのは失敗でした。
と、昨日の記事への補足が終わったところで本題――横田順彌のショートショート集(および、ショートショートの見地から重要と思われる作品集)のリストを掲載します。
横田順彌は、いわゆるSF第2世代の作家のなかで一番のショートショートの書き手でしょう。作品数はもちろんのこと、内容も抜群に面白いです。
『宇宙ゴミ大戦争』ハヤカワ文庫JA(77)
処女作品集。ショートショート集ではありませんが、巻末の「〔H2CO3〕」には稲垣足穂風の掌編21編を収録。
『宇宙のファイアマン』集英社文庫コバルトシリーズ(78)
これまたショートショート集ではありませんが、巻末の「ショート・ショート・カーニバル」にはショートショート14編を収録。
『銀河パトロール報告』双葉社(79)/集英社文庫(81)
またまたショートショート集ではありませんが、巻末の「金大事包助作品集」にショートショート5編を収録。うち1編「麻雀西遊記」は長いですけれども、ショートショートの連作と言えるような作品。これは大傑作です。
『反世界へ行った男』徳間書店(81)/『ヨコジュンのショート博覧会』徳間文庫(87)
『二人だけの競奏曲』講談社(84)/講談社文庫(87)*赤川次郎との共著。
『悲しきカンガルー』新潮文庫(86)
『犯人はダ・レ・ジ・ャ事件簿』大陸ノベルス(87)
推理クイズ集ですが、これは(横田順彌の)ショートショート以外の何物でもないと思います。
『奇想展覧会』双葉ノベルス(88)/双葉文庫(90)
『とっぴトッピング』アルゴ文庫(88)
『宇宙船[スロッピイ]号の冒険』徳間書店(89)/『さらば地球よ! 宇宙船[スロッピイ]号の冒険』徳間文庫(92)
『ヨコジュンの大推理狂時代』ペップ出版(90)
これも推理クイズ集ですが、『犯人はダ・レ・ジ・ャ事件簿』同様、ショートショートと見ていいと思います。
『はるかなる旅路 宇宙船スロッピイ号の冒険』大陸ネオファンタジー文庫(92)
以上ですが、もう少し……。
『む 横田順彌の無比な無遊の物語』徳間書店(83)/『13の超小説』徳間文庫(89)
ショートショート集ではなく短編集ですが、これはぜひ読んでいただきたいと思います。何しろ帯に“著者絶賛!”。それが納得できる傑作集です。
横田作品の傑作集と言えば、永井豪選『原色馬鹿図鑑 横田順彌ハチャハチャSF傑作集』有楽出版社(82)があり、こちらも傑作揃いですけれども、残念なことに入手困難と思われます。ここ10年ほど古本屋を回りまくっていますが、1度も見たことがないですから。(ちなみに、『原色馬鹿図鑑』は「まるだしマッドずかん」と読みます。すごいタイトルですね)
その点、『む』(あるいはその文庫版である『13の超小説』)は入手が比較的容易です。まだ読まれていない方は、ぜひ!
2009-07-03 06:46
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