SSブログ

『夜と万年筆』

○毎日放送の〈チャチャ・ヤング=ショート・ショート〉
 関西のラジオ局、毎日放送(MBS)の深夜番組「チャチャ・ヤング」で募集、その優秀作をパーソナリティの眉村卓が朗読していたショートショートの傑作集です。選考は、もちろん眉村卓が行なっていました。
 ショートショートの募集は一九七一年から一九七二年にかけて行なわれました。番組が終了するまで続いたようです。
 入選作品集は、眉村卓編『チャチャ・ヤング=ショート・ショート』(講談社72)があります(毎日放送から二冊の傑作集も発行されていますが、これはリスナー用で、市販はされませんでした)。――『ショートショートの世界』107ページより

チャチャ・ヤングショート・ショート.JPG 私はこの番組のことを全く知らなかったのですが、特に関西在住のSFファンの胸には深く刻まれているようです。江坂遊も熱心なリスナーだったと聞きました。
 江坂遊もそうですが、中心となっていたリスナーの年齢は私より2~3歳上でしょうか。今となっては、これくらいの年齢差は誤差のうちですが、当時は非常に大きなものでした。こちら中学生、あちら高校生だったんですね。
 私はそのころラジオの深夜放送を聴く習慣がありませんでしたし、仮に深夜放送を聴いていたとしても、名古屋では受信は難しかったと思います。
 そんなわけで、放送をリアルタイムで聴くことはできなかったのですが、講談社のアンソロジー『チャチャ・ヤング=ショート・ショート』を読むことによって、その楽しさの一端を窺い知ることはできます。ほんと、羨ましい限りです。
 ショートショートのコレクターとしては、毎日放送発行の2冊の冊子も是が非でも入手しておきたいところなのですが、これが難物でして、おそらく入手は不可能に近いでしょう。一生の探求書になると覚悟しています。

 さて。
夜と万年筆.JPG こちらはほとんど知られていないと思いますが、類似のラジオ番組が名古屋にもありました。東海ラジオの深夜放送「ミッドナイト東海」です。
 パーソナリティだった蟹江篤子(アナウンサー)の担当日に放送されていた「朗読コーナー」――番組で募集したショートショート(と言えるか微妙ですが、短い短編小説)を蟹江篤子が朗読するというコーナーです。
 1973年10月5日にスタートし、1976年7月3日に終了。ものの見事に私の高校時代と合致します。そのころには私も深夜放送を聴くようになっていて、毎週このコーナーを楽しみにしていたものです。
 東海ラジオ・ミッドナイト東海・蟹江篤子編『夜と万年筆 ミッドナイト東海・朗読コーナーの本』有文社(77)は、その「朗読コーナー」で採用された作品の傑作選です。全19編。
 のちに、蟹江さんの番組にゲスト出演させていただいたりして、いやもう何と言うか、感無量でした。青春時代の思い出であります。
コメント(5) 

コメント 5

雫石鉄也

「チャチャヤング」非常に照れくさい言い方ですが、私の青春でした。あのころは1週間に数本はショートショートを書いていました。講談社の「チャチャヤング ショートショート」には私の作品も掲載されていて(雫石鉄也ではなく湯本哲也名義)、あの時の謝礼が私が生まれて初めて文を書いてもらったお金です。
毎日放送の傑作集、私は2冊持っていたのですが、阪神大震災のおり、紛失してしまいました。
by 雫石鉄也 (2009-04-03 09:54) 

高井 信

 雫石さん。
>(雫石鉄也ではなく湯本哲也名義)、
 本を読み直してみると、ちゃんと「解説」に書かれているんですね。気がつきませんでした。で、再読(というか、読んだのは30年以上も前のことなので、初読と同じですが)。戦前の探偵小説を思わせるような作品ですね。楽しませていただきました。
>毎日放送の傑作集、私は2冊持っていたのですが、阪神大震災のおり、
>紛失してしまいました。
 それは無念でしょうね。
 これまた忘れていたのですが、「解説」によれば、第1集は初版1000部+重版、第2集は4000部以上発行したそうです。そんなに部数が出ているのなら、どこかで入手できそうな気もしてきました。
by 高井 信 (2009-04-03 19:11) 

橘まるみ

 現在だったら「チャットチャットヤング」と表記されるであろう、「チャチャヤング」という大阪ローカルのラジオ番組があって、ショートショートの募集もしていたそうですけど、NHK第一放送の「ラジオSFコーナー」でも募集をしていましたね。
「日曜名作座」のSF版みたいな、作品朗読が主の番組でしたが、聴取者からのショートショート募集もしていました。
 後述の、中西龍アナウンサーか、
「君のちょっとしたアイデアにオチをつければ、たちまちSF作品のできあがりだ。ただし、名作になるかは保証しかねるがね。さあ、葉書一枚にまとめて、送ってくれたまえ」
 といった調子で、募っていました。
 昭和54年の放送開始でしたので、良く聴いていました。
http://www.green.dti.ne.jp/system16/NHKSF/SFLIST79.HTM )
 先頃亡くなった、声優の野沢那智さんの名前は知らなかったのですが、作品と朗読者の一覧を見て、
「ああ、あの声の人か」
 と、思い出しました。
by 橘まるみ (2011-07-23 17:05) 

橘まるみ

 一番印象的だったのが、先の、中西龍アナウンサーで、既に一世を風靡していた「にっぽんのメロディー」のしみじみとした語り口、「中西節」で、筒井康隆先生の「生きている星」などを朗読していました。
http://emuzu-2.cocolog-nifty.com/blog/2008/08/post_a691.html )
 隠れSFファンで、自ら志願したのかな。
 別番組ですが、中西龍アナウンサーの「気象通報」もあったそうで、聴きたかったものです。
 横田順彌先生の作品解説も楽しみで、広瀬正先生の「化石の街」においての、瑕瑾部分の指摘。夢枕獏先生の「カエルの死」の、効果音を使っての朗読などもありました。
「ショートショートの広場」の朗読もあって、自分の番が来るのを楽しみにしていたのですが、結局、やってくれませんでした。
 後年、東京ローカルの放送局に「ショートショートの広場」の番組ができて、朗読そのものは実現しました。
 でも、「ラジオSFコーナー」で、「ルパン三世」の声優さんや、中西龍アナウンサーに朗読してほしかったです。
by 橘まるみ (2011-07-23 17:07) 

高井 信

 拙作も「ラジオSFコーナー」で朗読していただいたことがあります。
> 横田順彌先生の作品解説も楽しみで、
 最初の作品では、横田さんの解説でした。
> でも、「ラジオSFコーナー」で、「ルパン三世」の声優さんや、
>中西龍アナウンサーに朗読してほしかったです。
 2本目の作品は、朗読:山田康雄、増山江威子、でした。
by 高井 信 (2011-07-24 07:10) 

コメントを書く

お名前:[必須]
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。